夢幻水滸伝
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第二百七十二話 海南省のことその三
「拙僧は確かに御仏に仕える身なので」
「だからですか」
「はい」
「そこからもお考えですか」
「はい、ですが」
それでもというのだ。
「それ以上にです」
「人としてですか」
「世界の危機を避けられるなら」
「それならですね」
「避けたいです」
是非にと言うのだった。
「そう考えています、多くの命が失われるなぞ」
「この世界の」
「兆いえ京に達するかも知れません」
この世界にある全ての命の数はというのだ。
「その全てが失われるなぞ」
「あってはならないですね」
「人がこれまで築いた文明もそうなり」
そしてというのだ。
「そうしてです」
「自然もですね」
「何もかもがなくなるのですか」
「それならですか」
「少しでも心あり考えられる者なら」
それならというのだ。
「そう考えることは当然です」
「そうですか」
「それで、です」
「今おら様にお話をしてくれていますか」
「はい、よければ」
茅にさらに言うのだった。
「そうしてくれますか」
「この海口からですか」
「まずは海南省を統一されては」
「そうですね」
少し考えてからだ、茅は大僧正に答えた。
「それではです」
「その様に動いてくれますか」
「そうさせてもらいます、ほなまずは」
「この海口をですね」
「一つにします」
こう大僧正に答えた。
「そうします」
「ではお願いします」
「はい、しかし」
ここで茅はこうも言った。
「まずはこの世界の海口と海南省のことを知りたいですが」
「まずはそうしたことを知ることですね」
「そうしてです」
そのうえでというのだった。
「動きたいのですが」
「そうしないと動けないですね」
「何かをするにはまずは知ることと」
その様に、と言うのだった。
「考えていますので」
「まず動くのではなく」
「知ってから」
それからというのだ。
「動きたいですが」
「賢明なお考えです」
大僧正は茅のその言葉に確かな声で答えた。
「そのことは」
「そうですか」
「では拙僧からお話しますので暫くは」
大僧正は自分から申し出た。
「この寺におられてです」
「海口と海南省のことをですね」
「そして世界のことも」
この世界のこともというのだ。
「お話させてもらいますので」
「では」
「ここにお泊り下さい」
寺にというのだ。
「お食事も出します」
「何から何まで悪いです」
「いえ、構いません」
大僧正は茅に笑顔で答えた。
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