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夢幻水滸伝

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第二百七十二話 海南省のことその二

 茅は寺の本堂にいた大僧正年老いたドワーフジャイアントの男である彼に対して会ってすぐにどうかという顔で述べた。
「幾ら何でもです」
「買い被り過ぎですか」
「起きた世界やとほんの学生ですよ」
 一介のというのだ。
「そうですさかい」
「期待されるとですか」
「弱ります」
 恥ずかしそうに述べた。
「添えられんと」
「起きられた世界ではですね、ですが」
「こちらの世界やとですか」
「貴方は星の方でして」
 それでというのだ。
「非常に大きな力をお持ちです」
「神霊に匹敵するまでの」
「ですから動かれるとです」 
 それでというのだ。
「まさにそれだけで」
「何かが出来ますか」
「そうです、何をされるべきかまだおわかりではないですね」
「実は」 
 その通りだとだ、茅は答えた。
「具体的にどうすべきか」
「ならまずはこの海口を拠点とされて」
 そうしてとだ、大僧正は茅に話した。
「海南省を統一され」
「そうしてですか」
「そしてです」
 そのうえでというのだ。
「治められては」
「そうするとええですか」
「あくまで拙僧の考えですが」 
 茅にこう前置きして話した。
「そうされてはどうでしょうか」
「そうですね」
 少し考えてからだ、茅は答えた。
「何もわかってへんですし」
「何をされるべきか」
「貴方は真摯にお話してくれました」
 茅は大僧正の目を見て言い切った。
「その目にです」
「その真摯さが出ていますか」
「はい」
 まさにというのだ。
「この世界のことをお考えですね」
「この世界を襲う危機が何かはまだわかりませんが」
 それでもとだ、大僧正は茅にその目のまま答えた。
「しかしその危機で大きな災厄が起これば」
「この世界が滅ぶかも知れないですね」
「人も他の生きものもです」
「その全てがですね」
「死んでしまいこれまで築いたことも自然も」
 まさにこの世の全てもというのだ。
「なくなります、これはです」
「避けたいですね」
「余程自分のことしか考えず」
 そしてとだ、大僧正は話した。
「目先のことしか見えていない輩でないと」
「この世界の危機を何としても避けたい」
「その様にですね」
「考えるものなので」
 それでというのだ。
「ですから」
「貴方もですか」
「その様に考えています」
「大僧正なので」
 茅は彼のその立場のことを指摘した。
「宗教者の立場からです」
「世界を憂いているとですか」
「お考えだったのかと思いましたが」
「無論それもあるでしょう」 
 大僧正は率直な声で答えた。 
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