夢幻水滸伝
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第二百七十一話 痛み分けとなりその十
「まだや」
「ましやな」
「そう言ってええな」
「そやな」
施もそれはと頷く。
「借金がないのはええことや」
「出来る限りや」
「これからも借金はせん様にしよな」
「政を行っても」
「国債は何時でも出せるけどな」
それは可能だというのだ。
「それで政を動かすことも出来るが」
「しかしやな」
「後がな」
「借金は返さなあかん」
「しかも一旦借りるとな」
「雪だるま式に増えるもんや」
それが借金である、国家のそれである国債も然りであり一旦それが生じると増えていく一方となりやすいのだ。
「そうなるさかいな」
「人でもおるからな」
「おるな、確かに」
羅はその通りだと答えた。
「何処でも」
「八条学園でも有名やろ、理事長さんの家の教会の信者さんでそういう人おったわ」
「ああ、八条家の人等天理教の信者さんでな」
「それで八条町の教会に所属してるけど」
この教会の信者だというのだ。
「あそこに昔おった信者さんでな」
「働かんでやろ」
羅はまずこのことから話した。
「奥さんに食わせてもらっててそれでふんぞり返ってるだけで」
「何もできんで何もしたことなくてな」
「しかも図々しくて大飯喰らいでやろ」
「無神経で思いやりもなくてな」
「それで遂に奥さんに逃げられてな」
「それでも働かんでな」
自分を養ってくれる人に愛想を尽かされてもというのだ。
「遂にや」
「借金していってな」
「首が回らん様になったわ」
「そういうおっさんおったらしいな」
「挙句団地の家賃も払えん様になって」
「家まで失って」
「ホームレスになったわ」
二人でその輩の話をするのだった。
「そこで一旦見付けてもらって」
「それで借金も清算してもらったけどな」
「恩知らずで助けてくれた天理教の人等に何でか不満持って」
「あれこれ文句言ってな」
「何処も居場所なくなって」
「それで今行方不明やったな」
「こんなおっさんも珍しいけどな」
施はどうかという顔で話した。
「自分は会ったことないけど」
「中国でも日本でもどの国でもそうおらんやろ」
羅もそうした顔で話した。
「流石に」
「駄目過ぎるからな」
「何も出来んのにふんぞり返ってるとかな」
「お世話なったとこの文句言うとか」
「しかも借金こさえてって」
「それを自分でもどうにも出来んかったってのも」
「我はそうなりたくないわ」
羅は心から言った。
「絶対にな」
「最高の反面教師やな」
羅もこう言った。
「会ったことなくても」
「話を聞いただけでな」
「そやな」
「借金のことでもな」
「人間そうなったら終わりや」
こうもだ、羅は言った。
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