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おっちょこちょいのかよちゃん

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254 七色の泉と杖の新生

 
前書き
《前回》
 オットーの術でヴィクトリアから杖を取り戻したかよ子は反撃に出る。ヴィクトリアはアルバートが使用していた剣を振るって対抗する。そんな時、杖から青い光が現れてかよ子に降りかかる。かよ子はそれによって自身の格闘能力を強化させる事ができ、その能力を駆使してヴィクトリアの撃破に成功させるのだった!! 

 
 かよ子はヴィクトリア女王との戦いの後、連戦の疲労が溢れ出した影響で意識を失っていた。
「・・・」
 そして意識が戻る。
「・・・はっ」
「お、起きたか!」
「かよちゃん、大丈夫〜!?」
「う、うん・・・。ヴィクトリアは、倒したの・・・?私の杖は・・・?」
「ヴィクトリアはかよちゃんの手で倒せたんよ。それでヴィクトリアの建物は崩れて元の平和主義の世界に戻ったんよ」
 上市が説明した。
「そっか、私の手で・・・」
 かよ子は自分の戦いを顧みた。ヴィクトリアがやったように自分の肉体強化の能力(ちから)を行使して打ち破った。
(私もあのような能力(ちから)を使えれば・・・)
 そしてかよ子はふと周りを見渡した。ここはヴィクトリアが占領して杖を取り返す為の戦闘現場となっていた筈だった。だが、今は沼か泉のような物が周囲に七つあった。水の色も異なり、緑、水色、薄橙、紫、白、橙、そして黒だった。
「ここは・・・どこ?」
「ここは先程ヴィクトリアと戦った場所だよ。元の平和主義の世界の領土として戻ったのよ。ここは嘗て七つの色の泉があったのよ」
「嬢ちゃんは戦った疲れと格闘能力を行使した反動もあるのだろう」
 クイーン・ベスとブランデー・ナンが解説した。
「そっか・・・」
「あの七つの泉・・・、晴信殿もあの美しさにいつも見惚れていたとの事だ」
 輝虎は独り言のように呟いた。
「そうだ、杖の所有者。あの七つの泉に杖を浸してみるとよい。君は杖を盗られていた間、何を願っていたのかしら?」
 クイーン・ベスが質問した。
「つ、杖を取り返したい。もう杖を盗られるおっちょこちょいなんてしたくない・・・。それから、もっと、杖を使いこなせるようになりたい・・・!」
 かよ子は思わず本心を言った。
「あ・・・」
 かよ子は少し恥ずかしくなった。
「いいのだよ。貴女がそう願うのならばその杖も応えてくれるであろう。さあ、杖を浸しておいで」
「うん・・・」
 かよ子は杖を泉に浸していった。一つずつ、七つ全てに水を浸した。その時だった。かよ子の杖から炎が出てくる。
「え?」
 周囲に炎があった訳でもなかった。
「もしかして、炎が周りになくても出せるの・・・?」
 かよ子は試したくなってきた。
「よし、それなら・・・!」
 かよ子は氷の能力(ちから)を使いたいと思う。周囲に氷雪が現れた。そして出せるものは何か、すると電撃、石を出現させ、棘や丸鋸の発射、更には刀や刃物がなくても杖が剣に変化させる事ができるようになっていたのだった。
「す、凄いよ、かよちゃん・・・」
 すみ子が褒めた。
「うん、ありがとう・・・」
「クイーン・ベス、ブランデー・ナン、彼女も一つの成長をしたと言う事だな」
 オットーは呟いた。
「ああ、そうね。ヴィクトリア女帝を格闘能力の強化で打ち破った。もしかしたらやってくれるかもしれないわね・・・」
「そうだ、折角杖を取り返せたんだから祝のブランデーでも飲みたいね」
「全く、貴女はブランデーが好きね。『ブランデー・ナン』って名前の通りに・・・。しかし、杖の所有者よ」
「あ、はい!」
「皆に通信機で杖を取り返せたと連絡をしておきなさい。それに疲れているだろう。今日はこの地で休むとよい」
「は、はい!!」
 かよ子は通信機を取り出した。
「こちら杖の所有者、山田かよ子。杖を取り返しました!皆、協力ありがとうございます・・・!!」
 かよ子は連絡した。

 本部の管制室。杖の所有者達が杖を奪還したという報告が届いた。
「よかった、かよ子、よかったわね・・・」
 まき子は娘の勝利に涙した。
「うん、これで後は杯を取り返すだけね」
「杯・・・」
 先代の杯の所有者が顔を曇らせた。
「安藤さん、落ち込まないでください。きっと取り返せますよ。ウチの娘達が動いてくれてますから」
 奈美子が慰めた。
「そうですね・・・」
「兎に角連戦で山田かよ子君も疲れている筈だ」
 イマヌエルが通信機で応答する。
「こちらイマヌエル。杖の奪還お疲れ様。かなり疲れただろう。今日はその地で休むといい。食事も用意するよ」
『あ、ありがとうございます・・・』
 照れそうに答える杖の所有者の声が聞こえた。

 山田かよ子が杖を奪還したという報告は各々にも届いた。

 杯の所有者の救出に向かうありやりえの友達の一行はかよ子の連絡を聞いた。
「かよちゃん、杖を取り返したのね」
「かよちゃんってあのりえちゃんが静岡で会ったって子だね」
 みゆきが確認した。
「そうみたいね。私はよく知らないけど」
 ありは夏に従弟を札幌に呼び出した事を思い出した。
(その時りえちゃんは清水に行ってんだっけ・・・?)

 杯の奪還へ向かうゆりは四人の女子高生と共にかよ子の連絡を聞いていた。
「かよちゃん、杖を取り返したのね」
「あのガキか・・・」
 鯉沢は本部で会った少女を思い出した。
「あとは私達が杯を取り返す番ね」
 ゆり達は杯の在処の捜索を続ける。

 平和主義の世界の境界線に守備戦線に立っていたさりや長山達もその連絡を聞いてホッとしていた。
「かよちゃん、良かったね・・・」
「はい、これで藤木君の救出に戻れますね」
 そして長山は眼鏡でそのかよ子達を見ていた。
(山田達、喜んでるな・・・。ここで激しく戦ったんだな・・・)
 しかし、彼女がいる所から藤木がいると思われる場所から遠ざかっていた。
(山田、これからまた戻るんだね・・・。今度は杖を盗られないでくれよ・・・)
 長山はそう願った。

 冬田、湘木と共に杖の奪還に協力しようと動いていた三河口はかよ子の報告を受けた。
「・・・冬田さん、反対の方向へ羽根を飛ばせ」
「え、ええ!?」
「かよちゃんは杖を取り返した。もうこっちへ行く必要はない。杯を取り返しに行く」
「で、でもお・・・」
(大野君に、一目でも会いたかったのにい・・・)
「また大野君か?」
「あ、う・・・」
 冬田は心の中を見抜かれた。
「は、はあい・・・」
 三河口に睨まれて冬田は羽根を方向転換させた。
(全く世話の焼けるおっちょこちょいだ・・・)

 かよ子達は七つの泉の地で夕食としていた。昼を抜いて戦っていた為か食欲が溢れていた。
「はは、大勝利の後の食事はさぞ美味しいようね」
 クイーン・ベスはかよ子の食べっぷりに感心していた。
「でもハンバーグとプリンだったら良かったなあ・・・」
 まる子は文句をこぼした。この日は酢豚と卵スープ、そして温野菜サラダに杏仁豆腐といった献立だった。
「嫌なら食わねばよかろう」
 石松が窘めた。
「は、はあい・・・」
 その一方、かよ子はご飯のお代わりを三杯していた。が、食べ終わるとかよ子は恥ずかしく思った。
(もしここに杉山君がいたら食いしん坊な子だって思われたかな・・・?)
 かよ子はふと好きな男子の事が頭に浮かぶのだった。

 その一方、レーニンはヴィクトリアの死亡の報告を受けていた。
「ヴィクトリアが倒され、杖を奪い返されたか・・・」
「杖を俺の時のように吸収しようと思ってたのか?」
 杉山が聞く。
「そうだ、貴様が祝言に(うつつ)を抜かそうとするから機会を逃したではないか」
 レーニンは同化した少年を叱責した。
「ああ、ワリイな。だが、あいつらを見届けてえし、紂王か妲己とかが杯を持っている筈だぜ。まずは杯の吸収だ。杖と護符はそれからでもいいぜ」
「全く・・・」
 そしてレーニンと杉山は翌日、紂王の屋敷へと向かうのだった。 
 

 
後書き
次回は・・・
(いくさ)の中の祝言」
 七つの泉に杖を浸した事によってかよ子の杖は七つの能力を対象物に向けなくても常時発動できるように強化された。かよ子は本来の目的・藤木の奪還に軌道修正して再出発する。同じ頃、紂王の屋敷ではある二人の少年少女の祝言が準備されていた・・・!! 
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