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夢幻水滸伝

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第二百六十四話 侠の世界からその四

「今すぐにでもと」
「ああ、ご飯はしっかり食べてな」
 緑麗は落ち着いた声で応えた。
「そのうえでな」
「会われると」
「そうするわ、その間待たせてもらうわ」
 緑麗はさらに言った。
「ここでな。自転車も駐輪場に置いて」
「そうしてですか」
「そうさせてもらうわ」
「何といいますか」 
 守衛はざっくばらんで飾らない緑麗に唖然としつつ言った。
「ごく普通の娘さんみたいですね」
「その辺りの家のかいな」
「星の方なのでどういった方かと思えば」
「実際私起きた世界やと何でもない家の娘やで」
 守衛に笑って話した。
「雲南省の」
「そうですか」
「たまたま親が八条グループの企業の工場で働いていて」
 それでというのだ。
「日本に留学させてもらっていて」
「それで、ですか」
「何かの縁でこっちの世界に来させてもらってるだけでな」
「星の方として」
「その責務はあってもな」
 それでもというのだ。
「私はな」
「ごく普通のですか」
「雲南省の娘やで」
「そうですか」
「田舎モンや」 
 明るく笑ってこうも言った、猫の牙が開かれた口から見える。
「私は」
「だからですか」
「お高く止まることはせんわ」
 守衛に笑って話した。
「そして自分で動くのがな」
「お好きですか」
「そや、それで今からな」
「市長さんにですか」
「お会い出来たらな」 
 それが可能ならというのだ。
「そうさせてもらうわ」
「そうですか」
「そや、待つで」
「ではお茶でも」
 守衛は市長から返事が来るまで緑麗を自分の待機室に入れた、そうしてそこで茶を出すと緑麗は礼を言って飲みはじめた。
 そしてだ、彼女が一杯飲むとだった。
 市長から返事が来て緑麗は市庁舎に案内されてだった。
 市長の部屋で会った、市長は羊人の若い男だったが。
 彼は緑麗に恭しく言ってきた。
「まさか星の方がご自身で」
「会いに来るとはかいな」
「思いませんでした」
「それ市長さんも言うねんな」
「言います、この世界を救って下さる方々です」 
 星の者といえばというのだ。
「そのお力は神霊にも匹敵する」
「そうしたモンでか」
「はい、私からです」
「会いに来るつもりやったか」
「そのつもりでしたが」
「いや、私別に大したモンやないし」
 緑麗は市長にもこうしたことを言った。
「そやからな」
「だからですか」
「そや、そんな祀り上げられることもないで」
「そうお考えですか」
「私は私や、田舎の娘や」
 それに過ぎないというのだ。 
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