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夢幻水滸伝

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第二百六十話 雲南省掌握その十四

「食べんことですね」
「絶対にな」
「普通に食べるならですね」
「よお火を通すことや」
「焼いたり煮たり蒸したり」
「揚げたりしてな」
 その様にしてというのだ。
「そうしてや」
「そのうえで、ですね」
「食べるのが妥当や」
「この様に」
「そうしても美味しいしな」
「そうですね」
「そやからな」
 それでとだ、施も蛙を食べながら話した。
「火鍋に入れてもな」
「ええですね」
「実際に美味いしな」
「刺身は確かに美味しい」
 郭はそれは確かだと言い切った。
「お寿司もな」
「そやな」
「しかし気をつけて食べるもんや」
「生ものやさかいな」
「何か昔はお寿司食べん人もおったらしいな」
「あたるの怖がってな」
「森鴎外さんとかな」
 郭はこの文豪の名前を出した、明治前半から大正にかけて小説や翻訳で活躍した人物として知られている。
「あの人本職はお医者さんやったさかい」
「それも細菌学が専門でな」
「お寿司は細菌だらけやって言うて」
「食べんかったんや」
「そやったな」
「あの人はお医者さんとしては悪名高い」
 脚気についての騒動からだ、脚気がビタミンB1不足から起こるということを頑として認めず脚気菌を探し続けていたのだ。
「そのせいで陸軍の脚気患者が減らんかった」
「それでよおさん死んだ」
「そのことからな」
「お医者さんとしてはな」
「悪名高いわ」
 本職でそうであったのだ。
「エリート中のエリートやったが」
「抜群の成績やったしな」
「そやったが」
 そうした人物だったがというのだ。
「お医者さんとしてはそうで」
「細菌を警戒して」
「お寿司も食わんかった」
「食べるもんはいつも熱消毒してた」
「湯舟にも入らんかった位や」
 これも湯舟に細菌が多くいると見てだ。
「細菌恐怖症やった」
「そう言ってよかった」
「森鴎外はええ人やなかったですね」 
 蒲もこう言った。
「どうも」
「そやな」
 施も否定しなかった。
「脚気のことといい出世のことといいな」
「出世欲も強かったとか」
「プライドが高くてな」
「名誉欲も強く」
「そして不遜な面もあったらしい」
「それで頑迷であって」
 蒲は今は杏酒を飲みつつ応えた。
「尚且つ親には逆らえず」
「ああ、今で言うファザコンでマザコンでな」
「そうした人では」
「どうもな」
「ええ人とはですね」
「言えんな、変にドイツ崇拝も凄いし」
 この面も強かったのだ。 
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