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原作(オリジナル)の主人公、略してオリ主

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第11話 祈り (高町なのは@8歳)

 
前書き
 
<警告>
厨ランキング地雷があります。一部ランク外の方がいらっしゃいます。

 

 
 
 私立聖祥大学付属小学校二年生、高町なのはは今日3月15日を以って満8歳になった。
例年通り海鳴市の名物喫茶「翠屋」は貸し切られ、なのはの誕生日パーティーの会場となっていた。

 時刻は17時。
なのはの友人達がなのはの誕生を祝いに続々と翠屋を訪い始める。


「こんばんわ。なのはちゃん。お誕生日おめでとう御座います。」

「よーう。高町。やっと8歳になったんだって?おめでとーさん。」


とても対照的な、本日初となる祝福をしてくれたのは、なのはさんのクラスメイトの神埼晶子さんと山田くんである。
実はこの二人、名物カップルとして全校規模で有名だったりする。もっとも、本人達は未だ恋愛関係にはないと否定しているが。
ちなみに山田くんは神崎さんへ恋愛感情を抱いていることを大っぴらに認めていたりなんかして・・・その際の、「Q:ロリコン乙! A:好きになった子が小さかっただけだ!!」という漢らしい質疑応答によって聖祥私立聖祥大学付属小学校の公認勇者へとランクアップした。小学二年生の春のことである。春ってこれだから怖い。


「Good evening!! なのは、お誕生日おめでとう!」

「おめでとう、なのはちゃん。」


名物カップルに続いて訪れたのは華美なドレスと淑やかなドレス、対照的な装いのアリサ嬢とすずか嬢、なのはさんの親友コンビであった。


「アキちゃん、山田くん、アリサちゃん、すずかちゃん。今日は来てくれてありがとう。」

「いいってことよ。んじゃまー、俺らは士郎さんにお茶とお菓子をたか、挨拶してくるわ。いくぞ、神崎。」 「はい。」


流石はオフィシャル勇者の山田くん。その筋の人間を泣いて黙らせる高町士郎氏に対してすら、どこまでも自由人である。
何気なく、親友二人との会話をなのはさんに優先させる心遣いが憎かったりもする。


「あの二人は相変わらずね・・・
 それよりなのは。今日のプレゼント、楽しみにしてなさい?
 洒落っ気のないあんたに、この私がぴったりの物を用意してあげたんだから。」

「あはは。えっとね、アリサちゃんと私の二人で選んだんだよ。」

「あの、アリサちゃんもすずかちゃんもありがとう。
 なのはも、二人のお誕生日には頑張ってお返しするの!
 うーん、まず、アリサちゃんには何をプレゼントしようかなあ・・・?」

「い、いいのよ。今日はなのはの誕生日なんだから、そんなこと考えなくても。」

「そうだよ。なのはちゃん。」


アリサ嬢のツンデレ発言が、誕生日当日の人間が何故か他人の誕生日へ一生懸命思いを馳せる、という珍妙な現象を引き起こしかける。 ――しかし、この二人の御嬢様が用意したものとは一体何なのであろうか?あまり高価な物だとなのはさんが萎縮・・・しなさそうだ。でも、お返しには困・・・らなさそうだ。
・・・ゴホン、アリサ嬢は何とか軌道を修正しようと、高町家《ホスト側》の面子を確認し、なのはさんに問いを向けた。


「あら?コウキはどうしたのかしら?」

「あっ、、、あのね、コウくんは病気でお休みなの。。。」


誕生日の数日前に原因不明の全身虚脱で倒れた――そのせいで今年のホワイトデーは彼の焼いたクッキーを食べられなかった――幼馴染の男の子のことを思いながら、寂しさと心配を綯い交ぜにしたような表情でなのはさんは答えた。
アリサ嬢は軌道修正に成功した。主にマイナス方向へ。


「・・・そう、ごめんなさい。なのは。」

「ううん。いいの。」

「でも、どうして高貴君は欠席したのかな?風邪じゃないよね?高貴君はそれくらいで欠席したりはしなさそうだよね。」

「そうね。コウキにしてはタイミングが悪いわねえ。一体何をしているのかしら?」

「そういえば、なのはもコウくんがどうして倒れたのか知らないの。」


なのはさんの暗い表情によって沈みかけた場の空気が、すずか嬢の一言で一転。一同の顔に疑問の色が浮かぶ。
それほどに今日という日における高貴の不在は違和感があった。
内容が内容だけに、欠席の理由を知る者は高貴以外には居なかったのだが、そこで精度の高い予想を述べる者が現れる。


「どうせ、高町の誕生日を祝おうと無茶したんだろ。あのアホは。」


その人は、翠屋に到着したばかりの八神雷電。頭脳チートな3人目の転生者にして八神はやての兄・・・何気に初台詞である。
発言の内容はどんピシャなのだが、高貴君が具体的に何をしようとしたのか、圧倒的に言葉が足りていない。


「はあ?あんたいきなり現れて何を、、、あ、それよりコウキが一体何をしt「コウくんはアホじゃないの!」」


アリサ嬢のごもっともな言葉をなのはさんが見当違いなリアクションが遮った。うむうむ、今日のなのはさんも絶好調である。


「ちょっと、なのは。おちつk「ライくん、コウくんに謝って!」」

「・・・アホにアホって言って何g「謝るの!!」」


本人の名誉のために断っておくと、なのはさんがここまで高圧的な態度をとるのは、およそ雷電に対してのみである。
構図としては、口の悪い雷電が高貴をけなす→なのはさんがお怒りになる→なのはさんには微妙に思うところがある雷電が沈黙→なのはさんの態度がビッグになる、というもの。
どうやら、この二人の相性はあまりよろしくないようである。険悪な仲、というわけでは決してないのだが・・・まあそう言う場合は大抵・・・・


「ごめんなー。なのはちゃん。うちのアホ兄が。」

「はやて・・・
 高町、悪かったな。高貴はアホじゃねえ。これでいいか?」 「・・・いいの。」


はやてが場を治めに介入し、その瞬間に、はやて一筋《シスコン・オブ・シスコン》たる雷電があっさりと謝罪して終わるのである。


「・・・それで?コウキが何をしたっていうのよ?」


先程なのはさんに遮られた質問をリプレイするアリサ。・・・そんなに高貴の欠席が不思議なのか?ああ、フシギダネ!


「だから、高貴は、高町の誕生日を祝おうとしたんだよ。どうせ先の事をあれこれアホみたいに考えて無理したんだろ。
 具体的に何をしたのかは知らん。まあ、だいたい想像はつくがな・・・言わないでおいてやるよ。」


一息にそう言い切って、さっさと場を離脱する雷電。どうやら彼はこれから山田くんとの会話に興じるつもりのようだ。
雷電は頭脳チートと見せかけつつコミュ障と見せかけて、オチは熱血バカなので――このことを知っている人物は意外と少なく、家族を除けば高貴と山田くんくらいだったりする――同類の山田くんとはさぞかし波長が合うことだろう。


「あはは、雷電君らしいね。でも、私も高貴君の欠席の理由がわかっちゃったかも。」


雷電へのフォローとともに、さり気なく衝撃のセリフを口にするすずか嬢。
うーむ、あんなにイヤミで迂遠な雷電の発言から事情を察してみせるとは流石に純度100パーセントの御嬢様は侮れない。


「本当?!すずかちゃん、教えてほしいの!」

「私もわからんわー。ほんで、なんでなん?」

「くっ。すずか、勿体振らずに早く言いなさいよ!」

「・・・ごめんね。でもこれは私の口からも言えないかな。特になのはちゃんには。」


当然の如くすずか嬢へ質問が殺到するが、素気無い答えを返すすずか嬢。
しかし、アリサ嬢はそんな答えで満足するような御人柄ではなく・・・


「じゃ、じゃあっ!なのはには秘密で私とはやてにだけ教えなさい!!」

「ええっ!アリサちゃん、ひどいの!」


 そうして、すずか嬢の側にアリサ嬢とはやて嬢が集まって内緒話を始め、「~かなって。」「なるほどね・・・」「ほっほーう。」「――の時になれば・・・」「うん、わかると思う。」などという思わせぶりな会話が漏れ聞こえ始める。
その横では、なのはさんが「おはなしを聞かせて!」と騒いでいたが完璧にスルーである。
・・・微妙になのはさんの扱いが悪いような気がしないでもないが、先程と違い、今のなのはさんの表情に暗いところは見受けられない。
なんだかんだで、なのはさんのテンションも上がってきたようだ。



 ――このようにして、なのはさんのお誕生日会は始まった。
なのはさんのちょっぴり膨らんだ頬が印象的な、最初の一幕であった。




-------------------------------




 時刻は19時30分。
既にディナーとして供された料理は概ね食され、ケーキの登場が待たれる時間となっていた。
そんな微妙な空白の時間帯に、八神雷電が動いた。
彼曰く、「今こそプレゼントを渡すにふさわしいタイミング。とりわけ、高貴のプレゼントはさっさとあいつに渡してしまうべき」。
至言である。それ以上に驚きである。何が?シスコン《はやて一筋》の彼になのはさんへの気遣いができたという一事が。
――実はなのはさん、先程からプレゼントの箱が置かれた場所をチラチラと見てはニヤニヤし、明らかに挙動不審になっていた。

ともかく、その言を請けて美由希さんが動いた。そのフットワークの軽さ、流石御神の剣士である。



「なのは、これはコウ君からのプレゼントよ。」

「ありがとう!」


大好物の骨付き肉を眼前に差し出された犬さながらの反応速度で箱へ飛びつき、それを受け取ったなのはさん。
間を置かず、次のプレゼントの運搬――常識的に考えて、恐らく彼女自身が用意していた物――に取り掛かる美由希さん。
自身の誕生を祝福してくれる友人知人に恵まれたなのはさんは、受け取るプレゼントも多いのだ。
この後に控えているもの《ケーキ》を思えば状況に先んじ早目に渡してしまうに限る、といったところか。
しかし、そんな美由希さんの積極果敢な行動《スペキュレイティヴ・エグゼキューション》をストップする人物が居た。


「あの、美由希さん。今少しええか?」

「うん、どうかしたのかな?はやてちゃん。」

「あんな?美由希さんが料理のことで悩んでるらしいってさっき恭也さんに相談されたんやけど――」


 こうしてきょうきょ美由希さんに対するはやてのリリカル☆クッキング講座が開催されることになってしまったのだ。どうしてこうなった?
全ては恭也のせいである。己の恥部《ポイズン・クッキング》を8歳児に暴露され、屈辱的な講義を受けさせられる・・・とんだ罰ゲームだ。
おや?美由希さんの手がメガネに・・・・・・




 美由希さんの公開恥辱プレイが執行されている頃、なのはさんはお誕生日会のハイライト《プレゼントタイム》を迎え、そのテンションは最高潮に達しつつあった。


「なのはっ、早く開けてみなさいよ!」

「うん!」


何故か、妙にテンションの高いアリサの言に後押しされ、今度はお預けを解かれた犬のような慌しさで箱の開封にかかるなのはさん。


「わあ!!」


そして、包装を全て剥がし終えたなのはさんは感嘆の声を上げた。
箱の中から現れたのは、妖しく輝く大粒のスタールビーをペンダントトップへ据えたアミュレット《魔除けのお守り》。
プラチナやゴールドのチェーンではなく、径の大きな蛇革のベルトに無骨なデザインの台座が些か以上に物々しい雰囲気を放っていたが、それを『手』に取ったなのはさんはアミュレットに込められた思いを正確に理解し、顔を綻ばせた。


「なんで小学生がこんなルビーを贈れるのよ・・・」

「あはは・・・高貴君だもんね。・・・・・・でも、これは予想以上だね。」


世間知らずのなのはさんとは違い、物の価値を正確に把握しているアリサ嬢とすずか嬢は、そのスタールビーのカラット数とクオリティにどこか呆れた様な諦めた様な表情で感想を漏らす。


 種明かしをしてしまうと、高貴が己の心象世界を探し回り――登録されている物品は優に1000を超える――投影した物なので、金額的支出はゼロである。
本来であれば高貴は、諸々の理由から投影魔術を用いずになのはの助けになる物を贈りたいと考えていたのだが・・・実に悲しきかな、小学生。
人の助けになれる物は少なからず良い物だ。そして、良い物は例外無く高い。・・・高い物が良い物とは限らないのが世知辛いところでもあるが。
それはともかく、よしんばお買い得品なんてものがあったとしても、それでも小学生には手が出ない価格である。
高貴の月のお小遣いは6000円。一応これでもなのはの3倍は貰っている――実態は高貴がなのはの財布を半ば管理している――のだが、無い袖は振れぬ。
そんなわけで慣れない――高貴は秘匿の必要性などから解析と強化の魔術を専らにしている――投影魔術に手を出した反動で見事にぶっ倒れ、全身虚脱で数日は寝たきり生活を強いられる破目に陥ったのだ。
・・・こんな自殺魔術を戦闘中に多用するエミヤはバケモノか?英霊《バケモノ》か。

 もっともそんな代償を支払っただけのことはあり、殺傷設定のフォトンランサーを受けても無傷に抑えるほどの逸品が製作されたのではあるが。
これを身に着けていればバリアジャケットを展開していない時に攻撃を受けてもなのはさんの身の安全はある程度確保される見込みである。
とは言えそのアミュレットの神髄は本当の意味での『魔除け』であり、予め不運不幸の類を遠ざけ、危地にあっても精霊の加護を装備者に与えるという破格のものだ。
まさしく、「なのはが危ない目に遭ったりしないだろうか?(オロオロ 」という高貴の、そんな気持ちの結晶と言えるようなネタアイテムである(笑)
なのはさんが思わず笑ってしまうのも仕方がないと言えよう。え?なのはさんはそんな意味で笑ったんじゃない?・・・・・・そうなの?


「ごめん、アリサちゃん。後ろを留めてくれないかな?」


 一方、ショッキングなアリサ嬢とすずか嬢の心情など一切関知せず、マイペースにアミュレットと戯れていたなのはさん。
結局自力で身に付けることはできなかったのか、アリサ嬢に助けを求めることにしたようである。


「もうっ。仕方のない子ね・・・
 はい、これでいい?苦しくない?なのは。」

「うん!ぴったりなの!!」


満面に笑顔を浮かべ、飛び跳ねるような勢いでアリサ嬢とすずか嬢の方へ振り返るなのはさん。
その首元にて存在を主張するのは太い革のベルトと大粒のスタールビー。


「あっ」 「わっ」


なのはさんの仕草とビジュアルが、首輪を着けられて喜んでいる犬のそれと被って見えてしまい、思わず変な声を漏らしてしまった御嬢様方であった。


「あの、何か変だったかな?な、なのはには似合わない?」


親友二人の表情が芳しくない事に気付き、ネガティヴに入り始めるなのはさん。
自分でも、「ちょっと大人っぽいデザインなの」とか、「でも、コウくんが贈ってくれたんだから、今のなのはにピッタリなはずなの」とか、内心では色々考えてドキドキしていたのだ。 ――サイズがピッタリだった時には喜びと安堵と温かい気持ちで、平らな胸がいっぱいになった。
それなのに、返ってきたリアクションはと言えば、何故か非常に驚いたような顔でちょっぴり後退るアリサちゃんとすずかちゃん。
なのはさんは深い悲しみに包まれた。


「そ、そんなことないわよ?良く似合っているわ!」

「そっ、そうだよ!
 あー、こんな素敵なプレゼントを貰えるなのはちゃんが羨ましいなあ。」

「あら、そうね。『なのはの大好きなコウくん』みたいな子、私も欲しいわ。」

「うふふ。そうだね。」


あまり必死に見えない表情で、そんなフォロー?らしきものを行ったアリサ嬢とすずか嬢。
というより、後半はからかっているだけにしか見えないのだが。
今の二人はニヤニヤしながらなのはさんのリアクションを待っている。どう見ても故意犯です。本当にありがとうございました。


「にゃっ?!
 だ、駄目なの!コウくんはあげないの!!」

「あらあら。」

「うふふ。」


そして、見事に地雷を踏み抜いてみせたなのはさん。二人の表情も非常に、非常に、満足気だ。
もし、この場に高貴が居れば即座になのはさんをフォローして場を収めたであろう。しかし今日の彼は臨時休業である。
アリサ嬢とすずか嬢の目線が交わり――「「コウキ(高貴君)が居ない今日こそ、なのは(ちゃん)を弄くる(問い詰める)チャンスよ(だね)!」」――アイコンタクトが成立する。
流石は既に社交界デビューを果たしている生粋の御嬢様《ミレディ》。社交界でアイコンタクトは標準武装ということか。実に見事なコンビネーションだ。


「そ・れ・で?
 なのははコウキのことをどう思ってるのよ?」

「確か、初恋の人なんだよね?素敵だなあ。」


アリサがジャブを打ち込み、追撃ですずかが誘導尋問《右ストレート》をぶつける。教科書的なワンツーパンチである。
そもそも、なのはは初恋の人、仮にそんな人物が存在するとして、、、それを二人に明かした事はないのだが・・・
それなのに、知っているんだぞ?とばかりに笑顔でプレッシャーをかけるすずか嬢。
あの、今日8歳になったばかりの子供に接する態度としては少々黒すぎやしませんかね?


「に"ゃっ?!えっ、あのっ、そのっ、そうなの。。。 //////」


おーい、なのはさん。


「へぇ~。ふぅ~ん。」 「やっぱり、そうだったんだ。」


実にイイ笑顔でなのはさんの答えを受け取る二人。
先ほど、なのはさんをからかっていた時の笑顔を100ニヨニヨとすると1000ニヨニヨくらいの笑みを浮かべている。真にイイ笑顔である。


「・・・・・・え?
 ア、アリサちゃん?すずかちゃん?
 ・・・えっ?えっ?えーーーー?!
 二人とも、なのはにうそをついたの?!」


未だに笑いを隠し切れていない二人へ詰め寄るなのはさん。すわ、なのはさんのO☆HA☆NA☆SHI発動か?
しかし、運命はなのはさんにどこまでも残酷であった。あたかも天が二人に味方をしたかのようなタイミングで、はやてがやって来てしまう。
どうやら美由希に対して行われていたはやてのリリカル☆クッキング講座が丁度終わったようだ。なんという偶然。なんという悲運。アミュレットぉ・・・


「なんや、おもろそうな話しとんな。うちにも聞かせてや。」

「あ、はやてちゃん。実はね・・・」


はやてへ手早く事の成り行きを説明するすずか。
こうして、なのはさん包囲網は三人に増強された。されてしまった。
今後の展開次第では、更に母の桃子や、姉の美由希や、すずかの姉の忍や、級友の神崎までもが包囲網に加わる可能性があるというのだから悲惨である。
・・・本当にこれはなのはさんの誕生日を祝う会なのであろうか?


「ほぉ~。やっぱりなのはちゃんは高貴君のことが好きやったんか。」

「にゃっ、にゃーっ?!しぃー!しぃーっ!なの!!はやてちゃん!」

「まあ、バレバレやったけどな。」

「うふふ、そうだね。」


すずかは、2年前の夏休みに目撃したシーンを思い出しながら、はやての感想に同意した。


「あのね、なのはちゃん。なのはちゃんって、いつも高貴君と一緒だったでしょう?毎日手を繋いで登下校しているし。
 それに、2年前、、、クラスのボウリング大会に寝ている高貴君をなのはちゃんが抱えて連れてきたことがあったりもしたよね。
 そんななのはちゃんをずっと見てきたみんなは、何となくわかっていたと思うよ。」

「そうね。」

「せやな。」

「うふふ、そうよねえ。」


すずか嬢のごもっともすぎる指摘にしみじみと頷いてみせる包囲網の面々。 ・・・・・・あれ?


「お、お母さん!」


Oh... なのはさん、御愁傷様です。





-------------------------------




 同刻、高町家縁側。
寝たきり生活を強いられているはずの高貴はベッドを抜け出し、夜空に浮かぶ月を眺めて物思いに耽っていた。


――装備者の幸運を補正し、Cランク相当の対魔力スキルを付与する魔除け《アミュレット》、装飾品としては破格の性能ではあるが、、、
英霊エミヤは、神造宝具である至高の聖剣《エクスカリバー》の投影を試みれば剣に特化した自分でも自爆して負けてしまう、といった旨の発言をしていた。
その言からは、神造宝具でもなければありとあらゆる宝具を投影し使いこなしてみせるという強烈な自負が滲み出ている。 ――事実、彼はAランクの宝具すらも難なく投影し、戦況を好転させていた。
翻って、己は如何であろうか?たかがアミュレット一つを投影しただけで、こうしてろくに体を動かせなくなる有様。
これでは宝具の投影など、ましてや、戦闘中にそれを完遂し活用するなど、夢のまた夢である。

――果たして、これで良かったのだろうか?
投影魔術の研鑽《リスク》を避け、地道に己の基礎能力を引き上げることに費やした3年。
当初はあれほど扱い難かった二本の小太刀も今では素手同様に違和感無く振るえる。鋼糸や飛針の扱いも堂に入ったものだ。
それに、奥義こそ未だ修めてはいないが、高速戦闘で最も重要になる「神速」は最初から無制限に使用できるに等しい状態だった。
おそらく今の自分ならば、切り札を見せずともAAA+ランクの魔導師クロノ・ハラオウンにも遅れを取りはしないだろう。
しかし、『シナリオ』における最強最後の敵は条件付とはいえSSランクの大魔導師、プレシア・テスタロッサである。。。


「切り札、か。」


一人呟いた高貴は自身の体内に意識を移す・・・探すのは、外気を取り込み体内に循環させるリンカーコア、それとは異なる力の源泉。
心臓の脈動にも似た、それから発せられる内気の奔流である。


「右手に気。」


その力を掌握し、コントロールすることに成功した高貴は、、、


「左手に魔力・・・合成、っと。」


いとも簡単に咸卦法《アルテマ・アート》を実践してみせた。
もっとも、特別な『眼』に解析魔術を組み合わせることができる高貴にしてみれば、魔力や気の流れを見切り、調整する程度は最初から児戯に等しかったのだ。むしろ、気に目覚めることの方が大変だったほど。
同様の手法で設置型バインドを見切ることも出来るであろう。クロノに勝てる、というのも根拠のない妄言というわけではないのだ。


「・・・もともと変な風には見えていたが、咸卦状態だと完全に世界が止まって見えるな。
 持続時間はもう諦めるしかないが、問題は防御力なんだよな。こればかりはぶっつけ本番になるか。。。」


己の切り札にも、そんな不安を覚える高貴。
咸卦法によって更に強化された動体視力と、それに併せて高速化された思考能力であるが、だから妙案が出てくるのかといえば、そのような都合の良い効果は無い。




 ――そもそも、高貴をここまで不安にさせるプレシア・テスタロッサとはどのような人物なのか?

プレシア・テスタロッサとは・・・長い歴史を誇る管理局史上でも五指に入るバカ魔力を持つSSランカーであり、プロジェクトF.A.T.E.を完遂した天才科学者でもあり、次元跳躍魔法の行使に際しては大規模砲撃と物質転送を同時に行って見せた大魔導師であり、、、あ、リニスというチート使い魔のマスターでもある・・・という一期のラスボスにして原作屈指の実力者なのだ。

 一介の使い魔に過ぎないリニスが原作に与えた影響からもプレシアの異常性を垣間見ることが出来る。
リニスは、プレシアの研究を手伝いつつ、一期から四期までの十数年間を戦える極めて素性の良いインテリジェントデバイスを開発しつつ、フェイトを万能型魔導師としてAAAランクまで鍛えつつ、とどめに体力と精神力のガリガリ削られる子育てまでこなしてたとかいう猛者《スーパー使い魔》なのだ。
こんなの絶対ロッテリア超えてるよ。

そんなチート使い魔、略してチー魔のリニスならば、鬼婆と化したプレシアも普通にO☆HA☆NA☆SHIで更生させたに違いない。
彼女が派遣社員だったのが悔やまれる。
金髪オッドアイょぅι゛ょを拉致りにきた変態機人も普通にO☆SHI☆O☆KIされて涙目で「おうち…かえぅ…」したに違いない。
彼女が派遣社員だったのが本当に悔やまれる。
そして、アルフとザッフィーのそこそこ常識的なスペックに管理局の全武装局員がシンパシーである。嘘である。実はリア充爆発しろと思っている。特にザッフィー。

 また、夜天の主というロストロギア補正でSSランクになった八神はやてとプレシアでは基礎スペックからして絶望的なレベルの差が存在するとも思われる。
だいたい、幼女《キャロ》に殴り負ける総合SSランクの魔導師とか、どこの禁書世界のボスだよ?

 閑話休題。要するに天からニ物も三物も与えられ、その超絶的才能と努力により、真なるバケモノとしてSSランクに至ったのがプレシアさんなのだ。
プレシアが重病《制限付きチート》でなければ「おい、やめろ馬鹿(アースラメンバー) このアニメは早くも終了ですね」となっていたのは確定的に明らか。
そもそも、全盛期プレシアとガチで殴り合って勝てる原作キャラって初代リインフォースくらいではなかろうか。
魔王なのはや地上最強だったゼストでも魔導師ランクはS+止まりなのであるからして。

 ネギま!で例えるならばリインフォースがエヴァンジェリン(ギャグ補正抜き)で、プレシアさんがナギ。
S-のシグナムからS+の魔王なのはまでのゾーンはガトウとかアルビレオの準最強クラスであろうか。
はやて?カワイ子ちゃんとチュッチュしまくってアーティファクト無双するネギ坊主・・・・・・あ、嘘ですごめんなさい石を投げないデ!

 う"ぅ、話を戻そう。つまり、プレシア・テスタロッサは原作最強候補の一角である。
そのあまりの実力から一期で強制退場させられた公式チート的存在の強キャラである。
・・・そもそも、一期と二期のラスボスの強さは異常過ぎるのだ。こやつらは確実に魔王なのはよりもレベルが上の存在である。
そんなのをたった2名の8歳児が制さねばならないという。とんだ無理ゲーである。だが、やるしかないのだ。



「まあでも、、、やるしか、ないんだよな。」


そう。やるしかないのだ。


「残された猶予は、2週間と少し、、、あとは体を回復させて、コンディションを上げるくらいか。
 準備は整えてきた・・・そのはずだ。」


 最後にそう呟いた高貴は、覚束ない足取りで部屋へと戻っていった。
その小さな背中と頼りない歩みは、彼の未来の不確かさを代弁しているかのようでもあった。。。




 
 

 
後書き
あとがき
 
あれ?第三章ではまだ愛だの恋だのをやるつもりはなかったんだががが

それはさておき、今話で一番悩んだこと、それは、お小遣いの額。
毎日買い食いしてもカツカツでやっていける程度ってことで1日130円≒月4000円としました。適当です。
でもなのはさんは高貴君が甘やかしてるんでほとんど月6000円くらいになってそうな勢い。
高貴君が財布を管理してる意味?健康管理には凄く気を遣ってます。

えー、それから、高貴君はなのはさんの好意には気付いてます。
ただ彼は精神年齢的にはアラフォーのオッサンですから、色々考え込んでるんですよね。
とりあえず子供の恋愛ごっこに興ずる気はゼロです。でも、距離を取ってなのはさんを傷付けるようなアホな真似をする気もありません。
何が最もなのはさんのためになるのかを考えて、「今はただ傍に居て、彼女の将来を守ってあげるべきだよな」という方針です。



咸卦法
→エミヤから弓の才能とか投影の熟練度とかを抜いた劣化状態のままじゃあまりにもアレなんで・・・
 せっかくブラッドレイ閣下の眼を持ってるんだから、やっぱり御神流を極めればいいんじゃない?的な。
 剣士としてならば将来的には英霊エミヤも超える・・・はず。え?ランスロット卿?無理ぽw

プレシアさん
→強さの記述は超適当。全盛期のプレシアさんは魔王なのはよりつおいんだ、フーンそうなんだあ。くらいで流しておいてくだしあ。
 ティアナさんがやたらSランカーを特別視してたんで、AAA+とS-の間にはブ厚い壁があるという捏造です。同様にS+とSS-の間にも(ry
 以下魔導師ランクは強さとは関係ないとか何とかの話に関して。
 まあ、実力の指標には普通に使われてると思うんですよね。魔導師ランク。言葉からしてもろそんな感じですし。
 そもそも実力の指標じゃないなら、保有制限の論理的正当性ってどこにあるのよ?みたいな。
 え、保有制限自体が可笑しい?いや、人的リソースを平等に配分するという錦の御旗が(ry
 強さと関係ない云々は、S-とS+が対決しても相性やバトルプランや当日のコンディション次第でいくらでも結果が変わりうる、、
 そういう至極当たり前のことが魔導師ランクという物差しでは表現できない、そのことに対するエクスキューズなんじゃないかと思います。
 でもキャロにそげぶされるはやては流石に修行が足りないと思いますw

リニス
→おそらく実際はそこまでつおくない・・・よね?






 
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