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おっちょこちょいのかよちゃん

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225 杖を奪われた怒り

 
前書き
《前回》
 かよ子達の元に赤軍の奥平純三、そして戦争主義の世界の人間・ヴラド3世がかよ子達を襲撃して来た。ヴラド3世の槍攻撃に姿を消しての奇襲、そして奥平の手榴弾攻撃にかよ子達は苦戦する。そしてヴラド3世の襲撃にかよ子は羽根を落としてしまい、その末にヴラド3世に杖を奪われてしまう!! 

 
 かよ子は焦っていた。
「待てーーー!!」
「山田、本部に連絡しとけ!」
「う、うん・・・!こちら山田かよ子!ヴラド3世とか言う人に杖を取られちゃった!」
 かよ子は本部に連絡した。
『こちらイマヌエル。杖を取られただと!?解った、他の近くにいる者にも連絡してみよう!』
「はい、お願いします!」
 かよ子は礼をした。
(お母さん、ごめんね・・・。すぐに取り返すよ・・・!!)
 かよ子は焦った事や母から受け継いだ杖を取られてしまった事で少しベソをかいていた。

 本部で同じくかよ子から報告を聞いていたまき子は頭の中が空白となってしまっていた。
(杖が、取られたなんて・・・、なんておっちょこちょいしてるのよ・・・!!)
 先代の杖の所有者にとっても一大事であった。
「山田まき子さん、絶望なさらないでください。取り返します術はあります筈です」
「そうよね・・・」
「それから護符の所有者の方にも攻めてきていますわね。領土攻撃班と手を合わせます事なく通過していますから、飛行します機械などでも使用していますのでしょう」
「護符も・・・」
 先代の護符の所有者も気になっていた。杯に続いて杖も奪われ、更に護符まで奪われるとなると完全に劣勢である。護符も守り抜けなければ、今度は甥が輸送中の剣が集中的に狙われる事になる。奈美子はそう予測するしかなかった。
「だが、今、こちらに我々の味方が三人ほど本部へと向かってきている。おそらく剣を運んでいる者達だな」
「ええ・・・」
 奈美子は甥が無事である事に安堵した。
(健ちゃん、頑張るんよ・・・)

 剣を輸送する三河口、湘木、そして冬田は平和を正義とする世界の領土の上空を飛んでいた。
「だ、大丈夫かしらあ、大野くうん、助けに行かなきゃあ!!」
「ダメだ。俺達が行くにしても遠すぎるし、このまま方向を変えると剣まで奪われるぞ」
 冬田の訴えを三河口は取り下げた。
「で、でもお・・・!!」
「それに大野君よりもかよちゃんが問題だろ?」
「そうかもしれないけどお・・・」
 冬田は何もできない事に体が震えた。
(ったく、とんでもないおっちょこちょいしてくれたもんだな・・)
 三河口は心の中でかよ子に怒っていた。

 かよ子達は奥平とヴラド3世を追っていた。その時、大野の通信機が鳴る。
「はい、こちら大野・・・」
『大野くうん、杖大丈夫う!?』
 冬田の声だった。
「な、何だよ!?」
 大野は余りにも大きい声だったので耳を塞いだ。
『私、今の山田さんの話聞いて心配になっちゃったのお!!私も行きたいんだけどお・・・』
『こちら三河口。大野君、冬田さんが迷惑かけてすまん。失礼する』
 急に三河口の声に変わった。
「あ、ああ・・・」
「冬田さん、かよちゃんの知り合いといたのお?」
 まる子は呆気にとられた。
(ったく、何だったんだ?)
 大野は冬田からの連絡に変に思った。

 冬田は大野への寂しさで通信機で連絡を取ろうとしていたのだが、三河口に通信機を取り上げられていた。
「どこの映画かドラマの真似してんだ?!そんな私情の為に通信機を使うな!頭の中が大野君でいっぱいなら元の世界に帰れ!あるいはここで蹴落とすぞ!」
「ご、ごめんなさあい、もうしないわよお・・・!!」
 冬田は泣きながら謝った。
「もうよせよ、三河口。冬田だってもう反省してるぜ」
 湘木がその場を収めようとした。
「ああ、だが、どうだか。出発の時からずっと大野君の事ばかり考えてるみたいだったからな・・・。兎に角俺達は本部へ急ぐぞ。折角剣をここまで持って来れたんだからな」

 かよ子達は追走劇を続ける。今までにないほど羽根を高速に飛ばした。
「ヴラド3世!」
「追いついて来たか!」
 ヴラド3世は槍をかよ子達に向けた。
「同じ手が通用するか!」
 椎名が波を出して串刺しの槍を押し流した。
「杖を・・・、返して!!」
 かよ子は何か怒りが込みあがる。今まで以上にない怒りを感じていた。以前にも入鹿という人間に杖を奪われた事があったが、その時は怒りよりも焦りが募っていた。その時、先程椎名が押し流した槍がヴラド3世を攻撃していた。
「何だ、山田かよ子のあの凄まじい怒りは・・・。もしかして杖を奪われて取り返したいという気持ちから異能の能力(ちから)が爆発しているのか!?」
 次郎長はかよ子の状態を推察した。ヴラド3世は自身の吸血能力で槍を吸収して無力化させた。
「無駄な事を・・・!!」
 しかし、ヴラド3世はその場で動かなくなった。かよ子の羽根がヴラド3世に追いついた。
(な、なんだ、この身体の硬直は・・・!?)
「杖はどこ・・・!?」
「う・・・」
 ヴラド3世は自身の身体を空気に溶け込ませようとしたが、効かなかった。かよ子はヴラド3世に掴みかかる。
「どこなの!?言わないと、承知しないよ!!」
「つ、杖は・・・、赤軍のあいつが、持って行った・・・」
「・・・え!?」
「あやつがか!貴様、たたっ斬る!」
「効くかよ・・・」
 ヴラド3世は自身の吸収能力で次郎長や石松の刀、大政の槍やその他の皆の能力(ちから)を吸収しようとする。しかし、なぜかできない。
「な、なぜだ、なぜできん!?」
 ヴラド3世はその近くにいる杖の所有者がいた。
(この小娘が封じているのか・・・!?ならこの小娘の能力(ちから)を吸収し・・・)
 その時、次郎長がヴラド3世の首を撥ねた。
「終わりだ!」
「な・・・」
「私が杖を取られてどれだけ怒ってるか、解る・・・!?」
 かよ子の武装の能力(ちから)でヴラド3世の能力(ちから)は全て防がれていたのだった。
(んな、まさか・・・)
 ヴラド3世は光となって消えた。
「かよちゃん、凄いよお~」
 まる子はかよ子を褒めようとした。
「まるちゃん、これだ済んだわけじゃないよ!」
「え!?」
「杖を取られちゃったんだよ!取り返しに行かなくちゃ!!」
「あ、ごめん・・・」
「ごめん、私、あの人の所へ追いついて杖を取り返しに行ってくる!皆は先に藤木君を探しに行ってて!!」
「ええ!?」
「正気か!?お主一人で行く気か!?」
「だって私おっちょこちょいで取られちゃったんだもん、これ以上迷惑かけられないよ」
「でもお前一人で大丈夫なのかブー?」
「確かに心配だけど・・・!!」
「独りよがりな行動をするな!!」
 次郎長が怒鳴った。
「・・・え!?」
「我々はお主らが藤木茂とやらの少年を奪還する為の援護をしに来てはいる。何か会った時に我々は常に貴様らの支援をせよとフローレンスとイマヌエルから指示を受けているのだ!!貴様がどれだけ反対しようと我々も貴様の為に動く!だから必ず杖を取り返す手助けも必ずする!これは我々にとっては迷惑ではないのだ!!」
「う、うん・・・。ごめんなさい・・・」
 かよ子は叱責で泣いた。
「皆の者、藤木茂への救出は一度中断して山田かよ子の杖を取り返しに行くぞ!」
「おう!」
 皆はかよ子の杖を取り返しに奥平を追いかける。
「そうだ、本部守備を担う長山治にも連絡して、赤軍の奴の行方を探って貰うのだ!」
「うん!」

 杖の奪取に成功した奥平は戦争主義の世界の本部へと動いていた。奥平はトランシーバーを出す。
「こちら奥平純三。総長、杖を奪いました!」
『あら、お疲れ様。そのまま本部に戻るのよ。杖の所有者は殺害したのかしら?』
「そこまでは確認していませんが、もしヴラド3世が失敗していたら、ついでにやった方がよろしいでしょか?」
『いや、純三はそのまま本部へ向かいなさい。杖の持ち主の方は別の人に片付けさせるわ』
「了解」
 奥平は杖を奪えた喜びでいっぱいだった。
「これで杖に杯、か・・・。あとは護符と剣・・・。まあ、西川が護符の所有者の方に向かっているからそっちはあいつに任せるか」

 大野は通信機で長山に連絡した。
「こちら大野、長山、聞こえるか?」
『こちら長山!大野君、山田の杖が取られたって!?』
「そうなんだ、杖を取った奴が今どこにいるか探してくれるか?」
『解った、ちょっと待っててくれ!』
 一旦通信が中断される。そして30秒ほどして長山から返信が来た。
『こちら長山!杖は赤軍の人が持ってる!本部のある方向へ向かってヘリコプターに乗ってるよ!本部は今君達がいるところから北西の方角だ!』
「ありがとう!ごめんね、長山君にまで迷惑かけて・・・」
『大丈夫だよ、山田達が杖を取り返せるよう祈ってるよ』
「うん!」
 そしてかよ子達は杖を取り返しに奥平を追い掛ける。 
 

 
後書き
次回は・・・
「作戦の中断、そして移行」
 異世界最上位のアイテムの一つ・杖を奪われたという報告を聞いた者達がかよ子達に協力しようと動き出す。その一方、剣を運ぶ三河口、湘木、そして冬田が平和主義の世界の本部へと近づいていた。そして護符を狙うべく赤軍の男も平和主義の世界の領土へと踏み込もうとする・・・!! 
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