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おっちょこちょいのかよちゃん

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226 作戦の中断、そして移行

 
前書き
《前回》
 ヴラド3世の攻撃でかよ子は杖を落とし、ヴラド3世に杖を奪われてしまった。本部のイマヌエルに奪還の協力者の手配を頼み、かよ子達はヴラド3世を追走する。そして追いついた時、かよ子はヴラド3世への激しい怒りの影響か武装の能力(ちから)がかなり強くなっており、ヴラド3世は何もできず次郎長に首を撥ねられた。だが杖は赤軍の奥平に渡っていた。かよ子達は杖を取り返す為に奥平を追う!! 

 
 すみ子達は異世界最上位の道具の一つ・杖が奪われた報告を聞いて呆気に取られていた。
「かよちゃんの杖が、取られた・・・?」
「何だと!?杯に続いて杖が取られたとはとんでもない事だ!」
「ジャンヌ・・・、もしかして杖の奪還に協力すると?」
「ああ、そのつもりだ。雷の山を抜けた所だ。敵の本部も近づいている所でもある。ここから少し北東へ向かえば杖を取った者や杖の所有者と合流できるかもしれん」
「よし、そのかよ子って子達の為にもオイラ達も杖を取り返しに行くでやんす!」
「おう!」
 すみ子達は北東の方へ向かった。そして丁度通信が鳴る。
『こちら本部・イマヌエル。先程の報告通り異世界の最上位の道具の一つの杖が奪われた。今藤木茂救出班は本来の目的を中断させて杖の奪還に向かっている。彼女らに協力できる者、できれば杖の奪還に協力して貰いたい』
「は・・・」
「こちら領土攻撃班、山口!俺達が協力する!」
『ありがとう、感謝する!』
「では、先へ進みましょう!」
 エレーヌは浮遊の術ですみ子達を浮かし、移動させた。

 とある少女も杖が奪われたという報告を受けていた。
「杖が奪われたとな!?」
「まずいでごわすな。杯に続いて杖とは・・・」
「私も、行く。ここまで来ているなら」
「行くのか?」
「うん、行くよ」
 少女はこの世界の人物二名と共に杖を取りに動く。そしてスケッチブックのような物から巨大な翼竜を出してそれに乗った。

 かよ子達は長山の言われた通りに杖を取り返す為に北西へと進む。
(お母さん、フローレンスさん、イマヌエルさん、ごめんね・・・、とんでもないおっちょこちょいやって・・・!!必ず杖を取り返すからね・・・)
 その時、通信機が鳴る。
『こちら濃藤すみ子。私達も杖を取り返しに手伝うよ・・・!!』
「すみ子ちゃん、うん、ありがとう!」
 かよ子は協力者が増えてくれた事にありがたく思った。
(よし、杖を取り返すよ!)

 本部付近の上空。剣を運ぶ冬田、湘木、そして三河口は羽根に乗って本部へと向かっていた。
「この本部、出かける前よりも済んだ感触になってきたな」
「そうなのお?」
「それだけ領土攻撃班が次々と地を平和主義の世界に戻し、本部守備班はそれらを死守しているからだろうな」
「もう本部の建物が見えて来たぜ」
 西洋の巨大な城のような建物をした平和を正義とする世界の本部が三人の前に小さく見えた。そして門の前で羽根を降ろし、三人は玄関前に広がる庭園を歩き、建物内に入った。
「お疲れ様です」
 この世界に初めて足を踏み入れた時に通行手形としてフローレンスとイマヌエルからの手紙を確認していた二人の少女がその場にいた。
「『この世界の剣』を今持って帰って来た」
「これが・・・、ありがとうございます。それでは剣を置く部屋に案内いたします」
「ありがとう」
 三人は二人の少女に連れて行かれた部屋に入る。
「ここは・・・?」
 そこには戦争主義の世界の本部とは異なる四つの道具の置き場のような装置があった。その装置はテーブルのようなもので、剣、護符、杯、そして杖の四つがピッタリ収まるような枠があり、四つの引き出しがあった。
「剣の置き場はこちらです」
「ああ」
 三河口は持っていた剣を置いた。装置は特に何も起きなかった。
「三河口健様でしたか。そういえば貴方はフローレンス様とイマヌエル様からある手紙を受け取っていましたよね?」
「ああ、これの事か」
 三河口は出発前にフローレンスから貰った手紙を出した。
「もしかして俺だけの『道具』を作り出す為の装置なのか」
「左様でございます。本来ならば杖の所有者と杯の所有者、そして護符の所有者を一旦こちらに呼び戻してその道具を作り出す予定だったのですが・・・」
「杖の所有者・山田かよ子様は杖を奪われたという報告を受けたほか、杯の所有者・安藤りえ様も敵の人間に囚われている状態となっています。道具の作成が先送りになってしまった事をお詫び申し上げます」
「君達が謝る事はないよ。おかげで次の目的ができたからね」
「ところでフローレンスとイマヌエルはどうしたんだ?」
 湘木が質問した。
「今、手が離せない状態となっています。その為私ハンナとこのアンネが代理で応対させていただきました」
「そうか、ありがとう」
「これから貴方方はどうされる予定ですか?」
「そうだな・・・」
(もしかしたら杖を取り返しに行くかも?そうしたら大野君に会えるかもしれないわあ・・・)
 冬田はときめかせた。
「三河口、お前の従姉と相談した方がいいんじゃねえのか?」
「そうしよう」
 三河口は通信機を取り出した。ゆりに繋ぐ。
「こちら三河口健。ゆりちゃん、剣を本部に届け終わりました」
『お疲れ様』
「ところで俺や湘木に次にやって欲しい事がありましたらお願い致します」
『そうね、杖が取られたって情報聞いたけど、杖を取りに行ってもいいし、私達と一緒に来ても、あり達の所行ってもいいわ』
「解りました。湘木とも相談して決めます」
『じゃあね、健ちゃん、応援してるよ』
 従弟思いのゆりの言葉で通話は締め括られた。
「さて、湘木、お前はやりたい事はあるか?」
「全部やりてえところだが、杖を取りに行った方がいいんじゃねえか?」
(やったあ!!)
 冬田は目を光らせた。
「そうだな。おい」
 三河口は冬田の方に向く。
「大野君に会えると思って舞い上がるなよ」
「わ、解ったわよお・・・」
 冬田は圧を掛けられた。
「よし、行くか」
 三人は休息する事なく部屋を出た。
「行ってらっしゃいませ。お気を付けください」
 アンネとハンナは三人を見送り、三河口達は次の作戦に移行する為冬田の羽根に乗って本部を出発した。

 本部の管制室。イマヌエルは杖所有者の動向を気にしており、フローレンスは本部の区域に敵が侵攻している様子を確認していた。
「また赤軍ですか!」
「もしかして、今度は娘の護符!?」
「赤軍が来ていますと言います事はそうかもしれませんわ。それに敵の世界の人間と二名!警告いたします!」
 フローレンスは本部守備班全体に通信を繋げる。

 西川純。赤軍の一人であり、小型飛行機を使用して平和主義の世界の上空へと動いていた。
「奥平が無事杖を手にしたか。今度は俺が護符を手にする番だな」
「折角私が助力してやる事に感謝するんだな」
「あいよ、こりゃありがとうございますってよ」
「ところで護符の所有者は女だったか?」
「ああ、杖や杯の持ち主と違って成人の女だ」
「忌々しい・・・。後継ぎを作られては大変だな。さっさと始末せねば。このアンドリューがくたばらせてくれる」
 西川はアンドリューという戦争主義の正義の人間と共に平和主義の世界の上空を飛び、護符を狙う事を目当てとする。
(首を洗って待っていろ・・・!) 
 

 
後書き
次回は・・・
「病殺の殺戮者、アンドリュー」
 赤軍の西川は護符を狙いに平和主義の世界の領土へと侵攻する。本部守備班の三人の男性は西川ともう一名の戦争主義の世界の人間と対峙する事になる。そしてさりや長山達も西川達を迎撃すべくその現場へと急ぐのだが・・・!? 
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