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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝

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第23話 正宗の覚悟

私は司馬懿と話すうち彼女を引き込むには、私の秘密を明かす必要があると思いました。

司馬懿は三国志至上指折りの天才です。

特に外交交渉においては、三国志一だと思います。

外交交渉が得意な司馬懿は、相手の腹の内を見抜くことが得意なはずです。

私の秘密を最後まで、隠し通せるとは思えません。

その時になって告白するより、この場で告白した方が、彼女の信頼を得られると思います。

残念ながら、私には司馬懿程の知恵はないです。

だから、私には司馬懿の様な軍師は絶対に不可欠なのです。

私の武を戦場で、最大限に引き出してくれる軍師になりえるのは司馬懿だけと思っています。

この時代、他にも名軍師はいます。

しかし、その才を主君から警戒される程の軍師は司馬懿だけと思います。

私は史実の曹操のような過ちを犯すつもりはないです。

司馬懿の子供が簒奪を働いたのも、曹操の司馬懿への過度な警戒が一因だと思います。

『みな私が謀反すると疑っていたので、私はいつもそのような疑いを懐かれぬよう注意を払ってきた』

司馬懿は死の間際にそう家族に告げていたそうです。

そんな話を聞かされれば、司馬懿の子供達が魏に対し良い感情を持つ訳がありません。

司馬懿が魏に対し忠節を尽くしていれば尚更だと思います。

私は司馬懿に全幅の信頼を預けるつもりです。

それは命を預けることに他なりません。

命を預ける者に隠し事をしていては、信頼を得られるはずがない。

是が非でも司馬懿を私の軍師にしたかった私は、麗羽に説明した今後の未来を司馬懿にも語りました。

私の話を司馬懿はただ黙って聞いていました。

司馬懿は感情を殺すのが上手いので、内心どう思っているかわかりません。

「正直、私はあなたが未来を知っていると言われても、それを確かめる術を持ちません。ですが、私が見通していた未来をあなたが知っていることは事実です」

司馬懿は私の目を真っすぐ見据えながら話しました。

「あなたが未来を知る者であるというなら、私の未来を教えてくださいませんか?」

司馬懿は私に自分の未来を教えて欲しいと頼んできました。

司馬懿は史実において有能な人物ですが主君に常に警戒され、最後は簒奪者のような扱いです。

その話もするべきなのでしょうか?

「私の将来は話しづらい内容なのですか?」

司馬懿は真剣な顔で聞いてきました。

「あなたは自分の未来を聞く覚悟はおありですか?聞かなければ良かったと思えることもあるかもしれませんよ」

「既に、聞いております。それに劉ヨウ殿はご自分の未来を変えようとお思いなのしょう。ならば、私も運命がどのようなものであろうと変えてみせます」

決意は固いようです。

私は司馬懿に全てを話しました。

彼女が曹操という人物に脅迫紛いの方法で仕官させられたこと。

その後、曹操の元で栄達をしていくこと。

しかし、司馬懿の才の高さ故、曹操に常に警戒されるようになること。

司馬懿の死後、彼女の子供2人が簒奪を計画すること。

司馬懿の孫が簒奪に成功させること。

その話を司馬懿は沈痛な顔で聞いていました。

「私の子供や孫は簒奪者になるのですね・・・。ふふ、人にその才を恐れられ、その才を主君の為に使い続けた挙げ句、その主君からは警戒される。想像は着いていたこととはいえ酷い人生です。結局、私は仕官したところで、報われぬのですね。いくら栄達しようと、これでは滑稽ではありませんか。劉ヨウ殿、私はあなたが知っておられる通り、幼少のころより才知溢れていました。その才の所為で私に心許せる者など居りません。部屋に引きもるようになったのも誰とも会わなければ嫌な想いをせずに済むと思ったからです。何故、劉ヨウ殿は私を右腕にしたいとお思いなのですか?」

「あなたが簒奪者となった訳ではない。簒奪者はあなたの子供とその孫です。なら、あなたの子供を簒奪者にならぬ様な人物に育てればいいだけです。それに簒奪が全て悪いとは思いません。仮に、君主が手の施し用のない愚者であるなら、簒奪もまた正しいことです。愚者に治められる民が苦しむ姿を無視する方が悪と思います」

司馬懿は簒奪者なのではない。

少なくとも司馬懿自身は、魏に対し忠節を尽くしたと思います。

簒奪を計画したのは、あくまで彼女の子供のしたことです。

司馬懿は私の言葉を黙って聞いていました。

空気が重たいです。

どうすればいいでしょうか。

・・・・・・。

このままでは司馬懿を軍師にすることに失敗します。

今回失敗しても、何度でも仕官交渉をするつもりでしたが、司馬懿が自分の将来に悲嘆して、引きこもりが酷くなるかもしれないです。

そうなれば、二度と司馬懿に会うことができなくなるかもしれないです。

この機会を逃したら、次が無いと思った私は、別の話をしようと考えました。

何か良い話はないでしょうか・・・。

司馬懿の気を引けそうな話・・・。

駄目です想いつきません。

そうです!

私の最終目標について語りましょう。

麗羽にまだ話していないので気が引けますが、司馬懿に話しましょう。

私はこの空気を払拭するために、司馬懿に自分の描く未来への青写真を話すことにしました。
 
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