真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
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第22話 正宗と軍師の邂逅
「初めまして、劉ヨウです。司馬懿殿にはわざわざ会っていただき感謝します」
今、この部屋に居るのは私と劉ヨウだけ。
母上が、劉ヨウに気を効かせのね。
いつも同席する母上が席を外すということは、母上が劉ヨウを気に入ったということね。
仕官の話だから、私と劉ヨウと一対一で話すのがいい。
どうせアタシは断るけどね。
「こちらこそ劉ヨウ殿にお会いできて嬉しいです」
私は笑顔で劉ヨウに返事をしました。
アタシは内心腹が立っていた。
人が部屋にこもって気持ちよく黄昏れていたというのに・・・。
こいつのお陰で・・・私の憩いの時間が奪われた。
劉ヨウはアタシより少し年上ね。
アタシに仕官しろと人の家まで、押し掛けてくるからどんな人物かと思ったけど、見た目は普通ね。
でも、見た目とは裏腹に、強い覇気を感じる。
世間知らずの馬鹿かと思ったけど違うみたいね。
『山陽郡の麒麟児』と言われるだけのことはあるということね。
「それで劉ヨウ殿は私に、あなたの家臣になるように頼みにきたそうですね」
アタシはさっさと劉ヨウと話を済ませる為に本題に入った。
「はい。私はあなたに、私の右腕になって欲しいのです」
母上に聞いていたけど、率直すぎ。
普通、もう少し話しを盛り上げてから、切り出すものよ。
とんだ変人だわね。
「申し訳・・・」
私が断りを入れようとしたら、劉ヨウは私の言葉を制止してきました。
「断るのであれば、まずは私の話をもう少し聞いてからにしてくださいませんか?」
結局、あなたの右腕になれって話には変わりないでしょ。
聞く意味ある?
・・・いいわよ聞いてあげる。
後で、母上にくだくだと小言を言われるのも嫌だ。
劉ヨウの話を聞いた上で、お前のボロを暴いてあげる。
少しは覇気を感じるから、それなりの人物なんでしょうけど、今までの連中とそう変わらないはず。
皇族だかなんか知らないけど、どうせ出世したい、権力欲しいとかの理由で、私を手駒にしたいだけでしょ。
うんざりしているのよね。
せいぜい、アタシにつまらない話を聞かせるがいい。
「わかりました。劉ヨウ殿の話を聞かせていただきます」
「司馬懿殿ありがとうございます。私があなたを右腕として必要としているのは、私の夢の実現の為です」
「夢の実現ですか?」
ほら、早速来たわね。
さっさとボロを出しなさい。
「はい」
劉ヨウは一呼吸置いてから話を続けた。
「私には許嫁がいます。彼女の名は袁紹といいます。私は彼女と一つの約束をしました。それはこの大陸を統一することです」
大陸を統一?
こいつは本当の馬鹿じゃない?
漢王朝がこの大陸を治めているのに、何でお前が統一することができるのよ。
「大陸を統一するですか?漢王朝が健在なのにどうして、あなたが大陸を統一できるのです。それ以前に、この大陸は既に一つです。それとも劉ヨウ殿は皇帝を目指すつもりですか?如何に、劉ヨウ殿が皇族とはいえ、あなたの家柄は後漢の皇族とは遠縁です。皇帝になるには無理があります」
アタシは思いついた限りのことを劉ヨウに言った。
「そのようなことは承知しています。私は何も今とは言っていません」
アタシの反論に対し、劉ヨウは事も無げに、言い返してきた。
劉ヨウは何て言った?
『今とは言っていません』
確かにそう言った。
「それはどういう意味です?」
アタシは劉ヨウの言葉が気になった。
「いずれ大規模な農民の反乱が起きるでしょう。それを引き金に、漢王朝は衰退していきます。その結果、この大陸は諸候達が血で血を洗う戦乱の世になるはずです。その時、私と袁紹は天下に覇を唱えるつもりです。私には優秀な人材が一人でも多く必要なのです。その人材の中で、あなたには私の右腕となり戦乱の世を共に歩んで欲しいのです」
こいつ何者なの・・・。
最近、賊の数が増え初めているのは知っていた。
その原因が朝廷の腐敗にあるということも。
私のところに訪ねてくる豚ども所為で、民が重税に喘いでいる。
最初は、税を払えない農民達が賊に身を落とした。
その賊に襲われた農民達が彼ら同様、賊に身を落とした。
負の連鎖は止まらない。
政が変わらない限り、この悲劇は止まることはない。
国の礎である民を蔑ろにした結果、最後に待っているのは国の崩壊。
劉ヨウの言っていることはあながち的外れなことではない。
アタシは劉ヨウの先見の目に驚いた。
劉ヨウのような考えを持っている者はまずいない。
いたとしても片手の指で数えれる程度だと思う。
私は反乱が起きるであろうと思っていた。
しかし、漢王朝が滅びるとは思っていない。
いや、滅びないと信じたいというのが正確ね。
それを劉ヨウは滅びると断言している。
私は劉ヨウの冷静に未来を見据えている姿勢に恐怖を覚えた。
私は生まれて初めて、人に恐怖を感じた。
普通の人間は都合の悪いことから目を背ける傾向にある。
だから、都合の良い情報だけに目を向け、目を曇らせてしまう。
個人差はあるが、私とはいえ劉ヨウのように感情を微塵も入れずに判断できない。
人だからこそ、そうなるのが自然なのだ。
劉ヨウはそれを実践している。
未来をその目で見ているかのように・・・。
今まで、私の才に恐怖を感じた連中のことを思い出した。
こんな想いだったのか・・・。
アタシは今、別の想いも抱いている。
アタシは自分を恐怖した連中とは違う。
劉ヨウへ恐怖を感じた事実だが、それ以上に、初めて自分を理解してくれるかもしれないと期待する気持ちがあった。
「何故、そう思われるのですか?」
アタシは確認の意味で戦乱の世になる理由を聞いた。
この劉ヨウという人物の言葉が妄言でないという確証を得るため。
「少し長くなりますがよろしいですか」
アタシは劉ヨウに肯定の意味で頷いた。
劉ヨウの話は民の窮状の話から始まり、途中まで、アタシの予想の範疇通りの話だった。
しかし、アタシの想像の域を超えた内容を劉ヨウから告げられた。
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