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夢幻水滸伝

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第二百四十二話 南京に出てその十一

「その力を見せるとな」
「流石に降りますね」
「しかも街や村の自治はそれまで通りでな」
「荒らしもしない」
「逆に豊かにするさかいな」
 その条件を約束するからだというのだ。
「それやとな」
「尚更降りますね」
「別に最初言って降らんでな」
「攻めて降してもですね」
「悪いことはせんさかいな」
「皆殺し等は」
「自分は項王やない」
 施はこの世界では最高位の軍神の一人とされているこの人物の名を出した。
「別にな」
「項王は苛烈な神ですから」
「敵には容赦せんな」
「皆殺しです」
「倒し尽すな」
「そうした神です」
「その苛烈さがまた魅力にしても」
 それでもというのだ。
「真似ることはな」
「せんですか」
「項王は軍神であるが」 
 それでもというのだ。
「政の神やないな」
「軍、戦のこと一辺倒です」
「そうした神でこっちの世界でもな」
「項王はそうした方でしたか」
「力は山を抜き気は世を覆う」 
 項羽自身が詠った詩だ、史記の彼の本紀にあるが実は司馬遷自身が書いたものであり項羽の詩ではないかも知れない。
「そこまでの強さで三万の軍勢で五十六万の大軍を破った」
「それは強いですね」
「しかもただ破っただけでなくてな」
 劉邦との戦でのその戦のことを話した。
「何十万もの敵兵を倒した」
「まさに軍神ですね」
「一敗地に塗れるってな」 
 この時の劉邦の敗れ様を語った言葉である。
「そこまでや」
「敵を破りましたか」
「最後の方の一戦だけ負けたが」 
 それでもというのだ。
「その他の戦には常に勝った」
「恐ろしい強さだったのですね」
「それが項王やった」
「まさに圧倒的な強さでした」
「しかし敵には微塵も容赦がなくてや」
「敵が降ることを許さず」
「徹底的に倒した、しかし自分は項王やないからな」 
 その彼とは違うというのだ。
「降るんやったらな」
「最初に降らないと言ってもですね」
「許してな」
 そうしてというのだ。
「受け入れる」
「そうされますね」
「そやからな」 
 それでというのだ。
「どんどんや」
「どんどんといいますと」
「勢力を拡大させる、受け入れていった方がな」
 その方がというのだ。
「簡単に勢力を拡大出来る」
「項王のやり方とは逆にすればですね」
「赤龍帝やな」 
 今度は劉邦の名前を出した。
「こっちの世界の神様の一柱やな、この人も」
「偉大な皇帝でもあるという」
「魅力の神様やな」
「基本お酒と女の人が好きで怠け者ですが」
「それは自分の世界でも同じや」 
 このことは生涯変わらなかったという、その為若い時は無頼の人物として知られていたが周りに人が自然と集まっていた。 
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