夢幻水滸伝
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第二百四十一話 黄河の力でその八
「それやとです」
「民に迷惑をかけるもんやないな」
「はい、それやとです」
「戦をしてもな」
「長くかかってです」
そうしてというのだ。
「民に迷惑をかけてはです」
「問題外やな」
「それでどうして世界を救えるのか」
民に災厄をもたらしてというのだ。
「言うまでもないですね」
「ほんまにな」
羅もその通りだと答えた、そう言いつつ飲んでいる。飲んでいるのは今も赤ワインでガラスのグラスでそうしている。
「それは当然のことや」
「そうですね」
「それでやな」
「戦をするにしてもです」
「出来る限りやな」
「民に迷惑はかけんことです」
「これまでも民に迷惑をかけん様にしてきたけどな」
彼等を巻き込まず産業を傷付けない様にしてきた、彼等の誰も兵達にも田畑に足を踏み入れさせたり民家を壊させたり略奪もさせていない。
「しかしな」
「中国を統一する規模になりますと」
「相当にな」
「はい、気をつけんとです」
さもないと、というのだ。
「そうなってしまいます」
「そやな」
「そうですさかい」
だからだというのだ。
「出来るだけ短くです」
「済む様にすべきやな」
「そうかと」
「その通りやな」
「あちらに決戦を申し出ますか」
巴はこう提案した。
「ここは」
「その一戦の勝敗で決めるんやな」
「はい、勝った方が覇権を握って」
「中国の主導権を手に入れるな」
「そうなる様に提案しては」
「それがええな」
羅は巴の提案に暫く考えてから答えた。
「戦は避けられんにしてもな」
「一戦で終わらせる」
「決戦でな」
「それこそ洞庭湖の戦いの様に」
明の太祖朱元璋がまだ群雄であった頃に行った戦いだ、この戦いで勝った彼は当時彼が勢力を持っていた江南での覇権に大きく近付いた。
「一戦で決着をつければ」
「ほんまに民は困らんな」
「長々と中国全土で戦えば」
「例え民を攻撃せんでもな」
「戦禍はどうしても民に降りかかります」
火事が起これば火の粉がかかる、それと同じで戦をすればどうしても民に災厄が降りかかってしまうのだ。
「そうなりますさかい」
「それでやな」
「出来ればです」
それでというのだ。
「ほんまにです」
「ほなそれを施に提案するわ」
「そうして頂けますか」
「あいつも話がわからん奴やないしな」
「むしろお話が出来る人ですね」
こう言ったのは莫だった。
「そうですね」
「ああ、ちゃんとな」
「それで悪い人やないですね」
「ちょっと調子乗りなところもあるけどな」
それでもとだ、羅は莫に笑って話した。
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