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夢幻水滸伝

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第二百三十九話 真の主力での攻撃その十三

「そやったな」
「漢の頃の六千万程が一千万までになっています」
「その状態が数百年続いた」
「しかし隋が統一を果たししっかりと戸籍を行うとです」
「人口は四六〇〇万程やった」
「一千万が急にそこまで増えるとはです」
「まずない」
「これは戸籍を満足に行えなかったからです」
 その為だというのだ。
「そこまでしかわかりませんでした」
「蜀もそうした状況でな」
「戦で国力をさらに失い」
「余計に戸籍が出来なくなってな」
「蜀は建国当初の一割強まで人口が減っていました」
 戸籍のうえではそうなっていたのだ、政においては戸籍に掲載されている人口が国家の人口となる。そこからしか税収が得られず兵士や人夫を求められないからだ。
「これではです」
「滅ぶな」
「劉禅が暗愚だったからでなく」
「戦で疲弊していったせいやな」
「戦乱の世であったので」
「その蜀を四十年もたせてや」
「しかも実は悪臣は然程用いていません」 
 その黄酷にしてもだ。
「諸葛孔明の後もです」
「これはっていう家臣に任せてな」
「自分は印を押すことに徹していました」
「遊んでいてもな」
「やるべきことはしていました」
 皇帝としての責務を果たしていたのだ。
「印を押すだけでも違いますし」
「決裁されて政が動くしな」
「しかも良臣に任せるなら」
「尚更ええな」
「例え本人の資質が然程でなくとも」 
 少なくとも有能な人物ではなかったという、才気煥発という訳でも英気に満ちているだのそうした話はない。
「自分のことがわかってです」
「これはってモンに任せてな」
「印を押すだけでもです」
「ほんまちゃうわ」
「そうかと」
「そう思うと劉禅は然程愚かではないでしね」
 郁は劉禅にこの評価を下した。
「というかかなりましな部類です」
「極端な贅沢もしておらず残虐でもなかったですね」
「はい、そうした話もでし」
「ありませんし」
 遊びはしたがだ。
「特に諸葛孔明の意見はしっかり聞いていました」
「父劉備の遺言を聞いてでし」
「演義では邪魔の様に書かれていましたが」
 孔明の行いのそれをだ、演義での劉禅はまさに亡国の暗君である。
「しかし実際はです」
「一切していないでしね」
「むしろ皇帝として全幅の信頼を寄せていました」
「そして任せていたでしね」
「若し統一王朝の皇帝であったなら」
 劉禅、彼がというのだ。
「有能でなくとも果たすべき責務は行い」
「優れた人物を見て任せていてでし」
「それなりの皇帝だったでしょう」
「そうでしね」
「司馬氏の面々や煬帝なぞはです」
 翻って彼等はというのだ。
「如何なる国でもです」
「滅ぼすでしね」
「実際に滅ぼしました」
 巴は厳しい言葉で断言した。
「万歴帝も然りです」
「明は万歴の頃に滅ぶでしね」
 郁は明書にある言葉をここで出した。
「そうでしね」
「あの贅沢に耽るだけで朝議に一切出なかった」
 驚くべきことに二十数年間そうした、そして大臣も知事もまともに選ばず国政全体が麻痺してしまったのだ。 
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