夢幻水滸伝
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第二百三十七話 武の用い方その十二
「食材に使えます」
「見事な青ものや」
「そうです、ですが」
「そうした奴はな」
「文句や揚げ足取りばかりで何の努力もです」
「それでいてふんぞり返っててな」
「無能ですと」
それならというのだ。
「まさにです」
「害にしかならんわ」
「ですから」
「クビにするしかないわ」
「無能な働き者は向いている仕事に就ける」
その様にするというのだ。
「そうすればです」
「ほんま有能な働き者になるわ」
「モーツァルトに経理をさせてもです」
「全くの無能や」
「ですが作曲をさせると」
そうすればというのだ。
「天才です」
「あれ以上の音楽家はおらんわ」
「そしてゴッホに画商をさせても」
最初はそうであった。
「これもです」
「全くあかんな」
「事実彼は客に自分の好みを一方的に押し付けていました」
「我の強さと頑固さが悪く出たな」
「それで全く駄目でした」
「画家となるべき人やった」
「事実画家となり」
そうして千点にも及ぶ絵を描いた、浮世絵に影響を受けたと言われる独特のタッチは今も知られている。
「そしてです」
「評価もされだしていたな」
「次第に」
「まあその頃に自殺してもうたが」
「助けてくれる人もいましたし」
弟だけでなく郵便局員の人等がそうであった。
「ですから」
「あと少しでやったな」
「彼は富と名声を得ていたでしょう」
「生きているうちにな」
「そうでした」
こう話したのだった。
「あの人は」
「そうやったな」
「そのゴッホもです」
「画家であるべきでな」
「間違っても商売はです」
画商であった頃を見てもというのだ。
「させてはいけません」
「そやな」
「適材適所は重要です」
「極めてな」
「向いていない仕事をさせては」
それではというのだ。
「逸材も無能になります」
「その通りでしね」
郁も言ってきた。
「人には個性があるでし」
「左様です」
「だからでしね」
「無能な人材と言われても」
巴は郁にも話した。
「それでもです」
「向いているお仕事ならでし」
「天才とまで呼ばれる様になります」
「まさにでしね」
「しかしそれは努力家悪くて怠け者と呼ばれる人のことで」
「今お話している無能で文句ばかり言う人はでしね」
「どうにもなりません」
全くというのだ。
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