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夢幻水滸伝

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第二百三十五話 邯鄲からその十三

「今日の戦は終わりや」
「はい、それでは」
「これで下がりましょう」
 後ろにいる将帥達が応えた。
「そしてですね」
「明日またですね」
「いや、三人に聞きたい」
 羅は麒麟に乗る自分の前に疲労の極みにありながら何とか戦場にいる三人を見て言った。
「是非な」
「この方々にですか」
「そうされたいのですか」
「そうなのですか」
「そや、三人共わかってるやろ」
 羅は三人にあらためて問うた。
「もう自分等は限界や、明日戦ってもな」
「後は小突いただけで終わりです」
 呉は羅に答えた、最早気力だけでそこにいる。
「正直言いまして」
「そやな」
「明日戦になれば確実に敗れます」
 巴も何とかそこにいる状況だった。
「私達は」
「今日持ち堪えて限界でし」
 郁が死んでいないのは目だけだった。
「明日は無理としか思えないでし」
「これで勝敗は決した」
 まさにとだ、羅は言った。
「そやから明日返事を聞きたい」
「どうするか」
「降るか戦うか」
「どちらにするかでしね」
「もう答えは出てるが」
 それでもというのだ。
「そうしてええか」
「はい、それでは」
 巴が三人を棟梁として代表して答えた。
「明日の朝、食事の後で」
「話そうな」
「そうしましょう」
「ほな全軍撤退や」
 羅はこう言ってだった。
 軍を退かせた、撤退は整然としていて実に見事なものであった。そして撤退した後に残ったのはというと。
 崩壊寸前で何とか立っているという状況の三省軍だった、彼等は戦が終わると皆飯も食わずその場に崩れ落ちた、それを見てだった。
 巴は呉に難しい顔で述べた。
「最早」
「明日はな」
「戦えません、撤退もです」
「無理やな」
「はい」
 そうした状況だというのだ。
「これは」
「それやとな」
「もうです」
「降るしかないな」
「また申し上げますが責は私達が取る」
「勢力の棟梁達としてな」
「そうしましょう」
「わかったでし」
 郁は強い声で応えた。
「ほなでし」
「郁君もそれでいいですね」
「僕もこの勢力の棟梁の一人で」
 巴と共に副棟梁だ、その座にあるのだ。ただ巴の方が席次は上だ。星の者の格の関係である。
「それで、でし」
「私達と共にですね」
「降ってでし」
「責を取る」
「そうするでし」
「それでは」
「明日羅さんとお会いするでし」
「三人でそうしよか、三人で向かえばな」
 呉は二人に話した。 
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