夢幻水滸伝
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第二百三十五話 邯鄲からその十二
「敵軍はです」
「攻めを激しくしてるな」
「はい」
見れば戦局はそうなっていた、羅軍が攻勢の手を強め羅が開いた突破口からも他の場所からも攻め入っていた。
鉄条網も地雷原も破られ後方も劣勢になり物資を占領されていっていた。劣勢は明らかになろうとしていた。
「これではです」
「もうな」
「戦はです」
「負けやな」
「そうなるでしょう、ですが」
「それでもやな」
「ここまでくれば」
最早というのだ。
「私達も羅さんとの戦いを続けるべきか」
「若しくは采配に戻るか」
「選ばなくてはいけませんが」
「正直もうな」
「はい、覚悟を決めてです」
「采配がおろそかになってもな」
「そのうえで羅さんに向かいましたので」
そうしたからだというのだ。
「ここはです」
「もうやな」
「こちらにです」
まさにというのだ。
「腹を括って」
「向かうべきやな」
「迷うなかれ」
巴はこのことは強い声で言った。
「一度決めたらです」
「それが間違ってると思ってもやな」
「そうする、一瞬でも迷えば」
「戦は負ける、それも」
「大敗します」
「一瞬の迷いがそうなるからな」
「そうですさかい」
こう呉に話した。
「ここはです」
「迷わずにやな」
「羅さんと戦い続けましょう」
「采配は将軍達に任せるか」
「ここは。彼等に任せたのは私達です」
それならというのだ。
「どうなろうがです」
「信じる、そしてな」
「責は私達が負えばいいだけ」
「そういうことやな」
「そうです、国を治め軍を率いる者に何が大事か」
それはというと。
「やはり」
「責を自覚することでし」
郁は言った。
「そうでし」
「そやからです」
巴は郁にも応えた。
「ここはです」
「このまま戦うでし」
「三人でそうしましょう」
巴は羅が放った術を術に対する防壁で防いだ、そうして相殺されたその状況を見てそのうえで述べた。
「このまま」
「わかった、ほなな」
「このまま戦うでし」
呉と郁は巴の言葉に頷いた、そうしてだった。
三人は戦い続けた、彼等が采配を離れた三省軍は劣勢に陥った。しかし彼等が将帥に選んだ者達は粘り。
軍が崩壊する直前まで粘った、そのうえで。
三人も軍もだった、夜の帳が下りるまでぎりぎりのところで持ち堪えた、羅は周りが黒に近い濃紫に包まれる中で言った。
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