| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百十六話 小次郎、仇を取るのことその三

「近藤勇さんだったよね」
「虎徹だったな」
 甘寧は彼の持っていた剣のことに言及した。
「剣だけでなくかなりの腕前だったそうだが」
「そうだ。人間的にも器の大きな方だった」
 鷲塚の目が遠くを見るものになる。そうしてだ。
 そこに悲しさも漂わせてだ。こんなことも言ったのである。
「だが。無念だったろう」
「何か話を聞いたらあれだよね」
 馬岱もだ。目を伏せさせて応える。
「幕府は潰れて。その近藤さんも」
「切腹ならよかった」
 それなら納得できたとだ。鷲塚は述べる。
「しかし。首を斬られるとは」
「武士の世界では屈辱だったな」
 甘寧もその話を聞いていた。あちらの世界の武士のことを。
「切腹ではなく首を斬られることは」
「武士は切腹することが名誉だ」
 実際にそうだとだ。鷲塚は言い切る。
「あれだけの方がそうなるとは」
「世の中って。残酷だよね」
「時としてな」
「儚いものだ」
 鷲塚はその世界についてこうも言う。
「だがそれでもだ」
「誠はあるんだ」
「その惨く儚い世においても」
「誠が消えることはない」
 また断言する鷲塚だった。
「例え何があろうともだ」
「その通りだ」
 このことは小次郎も同意して頷く。
「私にはないものだがな」
「それがどうしてもわからないがな」
「蒲公英もね」
 二人にはどうしてもわからなかった。小次郎がその様なことを言うのか。だが小次郎はそのことについて何も言うことなくだ。見回りを続けていくのだった。
 その時は何も見えなかった。しかしだ。
 小次郎はその中でもだ。険しい顔で呟くのだった。
「必ずいる」
「あの男がですね」
「そうだ、いる」
 見回りが終わった時にだ。響に言ったのである。
「私は見たのだ。あの男を」
「死して尚も出てくるということは」
「間違いなくあの力だ」
 二人の脳裏にだ。刹那の闇が浮かんだ。
 その闇を感じ取りだ。小次郎はまた言った。
「若しそうだとすれば」
「その時は」
「闇をここで払う」
 そうするというのだった。
「必ずだ」
「わかりました。では私もまた」
 小次郎の言葉を聞きだ。響もだった。
「及ばずながら」
「力を貸してくれるか」
「はい」
 こくりと頷きだ。響は小次郎の言葉に応えた。
「そうさせてもらいます」
「済まない。しかしだ」
「しかし?」
「あの男が一人なら」
 その場合はというのだ。
「私は一人で闘う」
「そうしてですね」
「斬る」
 一言でだ。こうも言い切ってみせる。
「私のこの手でだ」
「新撰組の裏切り者をですか」
「そうだ。そして」
 響の声にだ。何かが宿った。
「仇を」
「仇?」
「あっ、いや」
 言ってしまったことに気付いてだ。即座にだった。
 小次郎はその言葉を収めてだ。こう言い繕ったのだった。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧