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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第百十六話 小次郎、仇を取るのことその四

「何でもない」
「左様ですか」
「そうだ。私は裏切り者を斬る」
 あくまでそういうことにしたのである。
「新撰組零番隊隊長としてだ」
「わかりました」
 その言葉に頷いてだった。響は小次郎に応えたのである。鷲塚はその小次郎を後ろから見守っている。
 こうした話があった次の日の夜だった。孫策の天幕にだ。
 二人の怪しい男達が近付いていた。彼等は闇の中でこんな話をしていた。
「ではいいな」
「へへへ、いいぜ」
 身体を屈め顔を包帯で覆った男が闇の男の言葉に応える。
「あんたの言う通りにな」
「動け。そしてだ」
「俺は執念深い男なんだよ」
 これが包帯の男の言葉だった。
「紫鏡様のな」
「今はその名前だったか」
「ああ、骸だったな」
 自分でこう言い返す見ればだ。
 骸のその顔、包帯から見えるその顔は無気味な紫色だ。あちこちが爛れており腐っている。その紫は腐敗した紫、腐った汁まで滴らせている程度だった。
 その彼がだ。闇の男、刹那の言葉に応えるのだった。
「そういやそうだったな」
「そうだ。では骸よ」
「何だ?」
「孫策は貴様がやれ」
 こう告げたのである。その骸に対して。
「そして怨みを晴らせ」
「そうさせてもらうからな。ところでな」
 今度は骸からだ。刹那に問うた。
「あんたは何をするんだ?ここで」
「俺か」
「何もなくてここに来たんじゃないだろ?」
「巫女達を始末しに来た」
 その為にだとだ。刹那は答えた。
「そうしてそのうえでだ」
「どうするんだよ。巫女をあらかた殺して」
「我々を封印出来る者達を一人残らず消す」
 そうするというのだ。
「これでわかったな」
「何か大掛かりな話だな」
「大掛かりではない」 
 それは違うというのである。
「俺は何時かそうしようと思っていた」
「そうか」
「そうだ。では行くがいい」
 こう告げてだった。刹那は闇の中に消えた。そうしてだった。
 骸は孫策の天幕に音もなく近寄る。その中でだ。
 その腐っていく顔にだ。下卑た笑みを浮かべて言うのだった。
「へへへ、じゃあやらせてもらうか」
「何をだ?」
「決まってるだろ。あの女を殺すんだよ」
 不意に来た声にこう返しもする。
「前に殺せなかったあの女をな」
「そうか。では紫鏡よ」
「今は骸だぜ」
「骸か。死して尚そう言うのか」
「ああ。俺は死んでも諦めねえんだよ」
 身体を屈めさせ。天幕を見ながらまた言う骸だった。
「あの女を。絶対に」
「話は聞いた」
 それはだと。声は返した。
「それではだ」
「?そういえば」
 ここでようやくだ。骸も気付いたのだった。
 彼に声をかけてくる者、それは何者か。その考えに至ったのだ。
 それでだ。周囲を見回してだ。声の主を探して問うた。
「手前、何者だ」
「私の声を忘れたのか」
「!?まさか」
「そうだ、そのまさかだ」
 応えながらだ。声の主は骸の前に出て来た。それは。
 新撰組の服を着た中性的な顔の者だった。その顔を見てだ。骸は驚きの声を挙げた。
 
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