真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
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第18話 天下への野望
「私は将来、華琳さんと戦に敗れ、没落し放浪の旅をすることになりますのね」
正宗様から、私の悲惨な未来について教えていただきましたわ。
名門袁家の当主が宦官の孫に敗れるなどという恥辱を味わうなんて、正直、実感が湧きませんわね。
でも、正宗様が私に嘘をつかれるなんて信じられませんわ。
真実として受け入れるしかありませんわね。
正宗様も非業の死を遂げられる未来を知りながら、その未来を回避するために頑張っていらした。
私も負けてはいられませんわ。
正宗様に側に居て、恥ずかしくない人となりに成らなければいけませんことよ。
悔しいですが、華琳さんは天才というのは認めますわ。
容姿と魅力は、群を抜いて、私が勝っていると思いますけど・・・。
「麗羽は華琳と面識があるのかい?」
正宗様は私が華琳さんと面識があることを驚いていますわね。
正宗様が華琳さんのことを真名で呼ぶことの方が気になりますわね。
「何故、正宗様が華琳さんことを真名で呼びますの」
私は猫の様な眼差しで、正宗様のことを見据えましたわ。
「洛陽に来る時に華琳に会ったって、話したじゃないか」
「それは聞きましたわ。でも、真名を交換したことは初耳ですことよ。そのことは後ほど、詳しく説明していただきますわ」
「ああ、分かったよ」
正宗様、なんだかホッとしていますわね。
このことは念入りに聞いておく必要がありますわね。
私はそれから、正宗様の未来について説明を受けましたわ。
その中で、私は腹立たしいことを耳にしましたわ。
「正宗様は野蛮で凶暴な孫策という危険人物との戦に敗れ、落ち延びた先で病を患って死ぬ事になるんでしたわね。孫策はなんて野蛮人ですの。揚州牧の地位にあった正宗様を下級役人の分際で、我欲のために戦を仕掛けるなど、天下の逆賊ではありませんか!」
孫策という人物に私は生まれて初めて殺意を抱きましたわ。
正宗様が、将来、野蛮人の所為で、お辛い目に遭われるなんて許せませんことよ!
「何故、もっと早く私に相談してくれませんでしたの?私は悲しいですわ。そんなに、私は頼りになりませんでしたの」
確かに、会った当時の私には、相談したいと思わないですわね・・・。
なんだか悲しく成ってきましたわ。
私は少し昔の自分の姿を思い浮かべ恥ずかしくなりました。
「麗羽。このことは親にも黙っていたことだから・・・。別に、麗羽だから黙っていた訳じゃないよ」
正宗様は、私が落ち込んでいると思ったのか、私を気遣うように話しかけてきました。
正宗様は、ご家族の誰にも未来の知識、神様からいただいた能力の話について話していないらしいですわ。
そこまで、私を信頼してくださっているのですね。
この麗羽は、正宗様となら、どのような苦難にも立ち向かって見せますことよ。
正宗様は、私のことを好きだと言ってくださいました。
正宗様が一番信頼できる人物である私。
正宗様が好きな人物である私。
・・・・・・。
これは間違いなく、私を生涯の伴侶と思ってくださっているに違いありませんわ!
正宗様には悪いですが、私達はまだ子供ですのよ。
でも、正宗様のお気持ちを悪し様にすることなんて、私には出来ませんわ!
・・・・・・。
そうですわ!
屋敷に帰りましたら、早速、叔父様にご報告しなくてはいけませんわ。
叔父様に頼んで、私達を許嫁の間柄にしていただきますわ。
オーホホホホ、正宗様。
麗羽に全てお任せくださいまし。
「ちょっと、麗羽。大丈夫かい?」
正宗様が心配そうに私の顔を見上げていますわ。
「だ、大丈夫ですわ。少し、将来のことを考えていましたの」
私は正宗様に笑顔で返しましたわ。
「話を戻すけどいいかい。漢王朝は滅びる。このことは間違いない。その引き金になるのが、黄巾の乱と反董卓連合による洛陽制圧。この二つの大事で漢王朝は形式上は残るけど、実質は滅びる」
「形式上は残るけど、実質は滅びる?それはどういう意味ですの」
「言葉のままだよ。さっき話した大事で漢王朝の権威は地に落ちる。権威を失った王朝は滅んだも一緒だよ」
「2つの大事の1つ目は、民によって引き起こされた反乱なんだ。この反乱を官軍は自力で征伐できない。困った朝廷は、各地の群雄の力を借りて、やっと征伐するんだ。2つ目は、中央で権勢を握る董卓という諸侯に嫉妬した連中が、洛陽に大軍を率いて上洛する。この暴挙を最高権力者である皇帝は黙って見守ることしかできなかった。これを切っ掛けに、朝廷と皇帝の権威は地に落ちることになるんだよ。だけど、その権威は利用価値があるのさ。戦乱の世になったからといって、領土を奪いとるには、大義がいるんだよ。そのとき、漢王朝の権威が役に立つのさ。例えば、手中にしたい領土の州牧に朝廷から任官して貰うことができれば、侵略行為の正当性の理由付けになるんだよ」
私は正宗様が語る内容に驚かされました。
確かに、そんなことが起これば漢王朝は権勢を失いますわね。
「正宗様は未来の知識を利用して、漢王朝を立て直そうと思わなかったのですか?漢王朝を立て直せば、戦乱が起きないで、正宗様も私も没落し酷い目に遭う事もないように思いますわ」
私は思っていることを正宗様に質問しましたの。
「それは無理だろうね。漢王朝は腐り過ぎているんだよ。例えできたとしても、それは延命であって、立て直すことにはならないと思おうよ。本気で立て直そうというのなら、中央は言うに及ばず、地方の汚職役人達を全て誅殺しないといけないよ。漢王朝が弱体化する原因の発端である黄巾の乱は、別に権力者が反乱を起こしたんじゃない。圧政に苦しむ民が苦しみに耐えかねて起こした反乱なんだよ。そこまで民を追い込んでだのは、他ならぬ漢王朝なんだよ」
正宗様の話を聞いて、漢王朝を立て直すのは無理だと感じましたわ。
それでも漢王朝が滅びることが分かっていながら、それを静観せざる負えないのは複雑な想いがありますわ。
「正宗様、これからどうしますの?」
私は戦乱の世をどうやって、生きて行くのか想像もつきませんわ。
正宗様の話では、私達にとって、戦乱の世は厳しいものとなるのでしょうから。
「私は大陸を統一するつもりだよ。華琳を下し、孫策を下し、並みいる諸侯を戦で敗る。戦乱が無くならない限り、私と麗羽が安心して暮らすなんて、夢のまた夢だよ。正直、最初は戦乱の世を生き残れればいいと思って、文武に励んでいたんだ。でも、麗羽と出会って、自分の事も大事だけど、君のことも守りたいと思ったんだよ。だから、鉄砲の開発もしていたんだ。少しでも、優位に戦乱の世を生き抜く為にね。15歳になったら旅に出ると言ったのも、将来に備え人材を探すためだよ」
天下を統一するという正宗様は、その理由に私と正宗様が安心して暮らすためと仰っていましたわ。
正宗様の言葉は、自分本意な願いですが、そのように想っていただける私は果報者だと思いましたわ。
まさか正宗様の旅を為さろうとしていた理由が、人材探しだったなんて・・・。
そんな前から、私のことを想ってくださったのですね。
私は正宗様の想いに応えるべく、彼と共に戦乱の世を生き残ることを決意しましたわ!
後書き
次、とうとう主人公が旅に出ます。
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