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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第百十四話 孔明、弓矢を奪うのことその四

「俺はあれなんだよ」
「あれっていいますと」
「どうしたんですか?」
「抜け忍だったんだよ」
 こう孔明と鳳統にも話す。
「実はな」
「忍の村を抜けられたんですか」
「そうだったのですか」
「ああ、それは聞いてたんだな」
 二人の話を聞いて頷く火月だった。
「そのことは」
「はい、舞さんから御聞きしました」
「そうした人が昔はいたと」
「俺はその昔の人間だからな」
 舞から見てそうなるのだった。火月は江戸時代の人間だからだ。
「まさにその抜け忍だったんだよ」
「何故忍を抜けたのだ?」
 周瑜が干し魚を手に取り口で引き千切り噛みながら問うた。
「理由があってだと思うが」
「妹を助けたくてな」
 それでだと答える火月だった。彼も干し魚を食べている。
「それで忍を抜けて力を手に入れてな」
「そうしてですか」
「妹さんを」
「で、それは何とかなったんだ」
 妹は助かった。そうなったというのだ。
 しかしここでだ。火月はたまりかねた顔になってこんなことを言った。
「けれどな。兄貴がな」
「ああ、蒼月さんな」
 草薙がこう言った。
「あの人か」
「そうだよ。兄貴が追っ手だったんだよ」
 抜け忍には追っ手が来る。そういうことだ。
「で、妹を助けたと思ったその瞬間にな」
「殺されたか」
 八神は鋭い目でぽつりと言った。
「そうだったのだな」
「おい、ころされてたら俺は今ここにいねえぞ」
 火月は即座に八神に突っ込み返した。
「じゃあ今の俺は幽霊かよ」
「それは違うな」
「そうだよ。俺は幽霊なんかじゃねえ」
 そのことを力説する。そして彼はこんなことも言った。
「よく見ろよ」
「足はあるな」
 八神はまたぽつりと言った。
「確かにな」
「足のある幽霊は普通っちゃよ」
 ホンフゥがこう突っ込みを入れる。
「というかそれは日本だけじゃないっちゃ?」
「そうだったのか」
「我が国でもそうですし」
「幽霊、鬼には足があります」
 孔明も鳳統もそのことは話す。
「何か日本で画家の人が絵にお茶を溢してそうなったとか」
「そう聞いていますけれど」
「そうか。わかった」
 それを聞いて頷く八神だった。彼のことはそれで終わった。
 そしてそれが終わってからだ。火月はまた話した。
「それでだよ。そこで兄貴に思いきり一撃喰らってな」
「それで一体」
「どうなったんですか?」
「忍の組織には死んだってことになったんだよ」
 その組織にはだというのだ。
「で、妹と二人で暮らしてるんだよ」
「けれどそれでもこの世界ではですね」
「お兄さんと再会されたんですね」
「全く。どういう因果なんだよ」
 困った顔になってまた言う火月だった。
「糞兄貴とまた一緒なんてな」
「それは私もだ」
 ここでだ。クラウザーが話に入って来た。
「私のことは知ってるな」
「確かギース=ハワードさんとでしたね」
「ご兄弟でしたね」
「母親は違う」
 クラウザーは孔明と鳳統にこのことを話した。
「だが、だ。兄弟であることは事実だ」
「そしてその兄弟だからこそ」
「因縁がですか」
「互いの存在を知った時から憎み合ってきた」
 それが二人だったのである。
「何度も戦ってきた」
「はい、お話は聞いています」
「そういう御関係だったと」
「だが今は共にいる」
 華陀と巡り会いだ。そうなったというのだ。
 
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