恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第百十四話 孔明、弓矢を奪うのことその五
「因果なことだ。しかしだ」
「それでもだな」
「そうだ。これもまた私にとっての運命だったのだ」
クラウザーは周瑜にも話した。
「あの男と共にいることもな」
「それで何かわかったか?」
草薙がクラウザーに尋ねる。干し魚は自分の炎で焼いてそれから食べている。
「あんた自身にとってそれがどういったことなのか」
「まだよくわからない」
クラウザーは顔は伏せてはいない。声もだ。
だがそれでもだ。彼にしてはいささか晴れない、毅然としていない言葉を出したのだった。
その言葉でだ。クラウザーは話すのだった。
「しかしそれでもだ」
「それでもなんだな」
「我等兄弟は最早争うことはないだろう」
こう話すのだった。
「それだけは確かな」
「そうですか。少なくともそういうことはですか」
「なくなったんですね」
「それだけでも大きいな」
二人と周瑜はクラウザーのその言葉に微笑んで述べた。
そしてクラウザーもだ。こう言うのだった。
「私も。しがらみを捨ててだ」
「そのうえで、ですね」
「あちらの世界に戻られても」
「父上のことから離れて生きよう」
二人の対立のはじまりとなっただ。それともだというのだった。
そうした話をしているうちに夜になりだ。船団はだ。
遂に敵陣の前に来た。しかし周りはまだ暗い。その朝が来る直前でだ。
ホンフゥがだ。こう孔明に尋ねた。
「で、どうするっちゃよ」
「ここからですね」
「そうっちゃ。もうすぐ朝っちゃよ」
「はい、明け方になれば」
つまりだ。間も無くだというのだ。
何をするか。孔明がここで遂に仲間達に話した。
「皆さんの火の術を水面にぶつけて下さい」
「それも立て続けにです」
「おい、そんなことしてもよ」
どうなるか。ビリーが首を捻りながら話す。
「ただ蒸気が起こるだけだぜ」
「ああ、本当にそれだけだよ」
ビッグベアもビリーに続いて言う。
「それで何になるってんだよ」
「とにかくです。炎を何度も水面に打ちつけて下さい」
「それぞれの船からです」
「まあ俺達の炎ってな」
それ自体はどうかとだ。草薙が話す。
「かなり強いけれどな」
「そうですね。それこそかなりの熱があります」
「だからです」
また言う二人だった。
「長江の水面にこれでもかとぶつけて下さい」
「とにかくありったけです」
「そうしてくれればいい」
周瑜もいぶかしむ仲間達に話す。
「作戦はそれで成功する」
「何か知らないけれどわかったっちゃ」
ホンフゥが最初に応える。こうしてだった。
彼等は孔明の言う様に炎をだ。明け方になると共に次々に打ちつけた。それを続けているうちにだ。
霧が起こった。そしてその霧はというと。
「随分濃いな」
「ああ、普通の霧よりもずっとな」
「かなり濃くなってるな」
「これはまたな」
「あっ、もう炎はいいです」
「これでいいです」
二人は仲間達に炎を使うことを止めてもらった。ここでだ。
そのうえでだ。あまりにも深い霧になったところでこう言ったのである。
「後は船の中に入りましょう」
「急がないといけません」
「余計に話がわからなくなってきたな」
火月もだ。いぶかしみながら言うのだった。
「火を水に打ちまくって霧が出たら船の中に入るのかよ」
「はい、そうです」
「そうして下さい」
「よくわからねえがわかったぜ」
釈然としないながらも答える火月だった。そうしてだ。
彼等は二人の言う通りそれぞれの船の中に入る。するとだ。
その彼等の船に向けてだ。凄まじい音がしてきた。そええを聞いて。
「!?何だこれは」
「はい、弓矢です」
「敵の弓矢の音です」
まさにそれだとだ。孔明と鳳統は同じ船に乗っている草薙に話した。今彼等は船の中にいる。そうして自分達の身を守っているのである。
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