真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
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第16話 火縄銃を我が手に
私は絡繰り師になろうと思います。
というのは冗談です。
将来のことを考えて、オーバーテクノロジーな武器を開発中です。
その武器の名は鉄砲です。
鉄砲の設計図は、私のあらゆることを知る能力で簡単に制作できました。
鉄砲のモデルは日本の戦国時代の武器である火縄銃です。
単に、火縄銃といっても生産地によって、外観が変わってきます。
私は仙台で生産されていた火縄銃である仙台筒の開発を行っています。
仙台筒の特徴は、大きめの銃床やストレートの八角銃身などに特徴がみられます。
見た目がかっこ良く感じたことが採用の決めてです。
火縄銃に使用する火縄は雨火縄にしようと思っています。
雨火縄は木綿を材料にし、塩硝をしみ込ませて、水に濡れても燃えるようになっています。
土砂降りで無い限り、火縄銃の使用に支障ありません。
いずれ揚州で使用するとなれば、この方が良いでしょう。
火薬の調合は試行錯誤しましたが、上手くいきました。
雨火縄も問題ないと思います。
問題は鉄砲の方なのです。
私には鍛冶の技術などありません。
それで鍛冶屋に頼もうとしたのですが、お金がありませんでした。
一度、鍛冶屋に足を運んだのですが、私の小遣いでは足りそうにありませんでした。
私の家は皇族といっても、前漢の皇族です。
後漢の皇帝とは、遠縁なので、名門といっても超セレブな麗羽の家のような経済力はないです。
その上、私の一族は清廉な人物が多いのです。
経済的に困窮はしていないですが、子供に大金を渡す程、裕福な家とは言いえないです。
私の叔父上などはよい例だと思います。
普段から、貧乏な格好をしているので、招待を受けた屋敷の家人に、門前で止められるような人です。
清廉すぎるのも問題だと思います。
私は金策先を考えましたが思い浮かぶはずもなく、麗羽に相談をすることにしました。
「これも内助の功というものですわ」
麗羽は気になさらないでくださいという表情で私に話してきました。
私は気になる言葉を耳にしましたが、仕方なく麗羽にお金を借りました。
何かヒモになった気分で、良い気持ちではありませんでした。
でも、麗羽以外に、理由を根掘り葉掘り聞いてこなそうな人物に心辺りがありませんし・・・。
麗羽には、必ず返済すると言ったのですが、笑顔で「いいですのよ。私と政宗様との間で遠慮なんてなさらないでください」と言われました。
私は鉄砲の技術をできるだけ秘匿したかったので、全ての部品を一つの鍛冶屋に頼むのではなく、洛陽だけでなく、近隣の街の鍛冶屋に小分けで依頼しました。
自作できそうな部品は、自分で制作しています。
最終的には、出来た部品を自分で組み立てる算段でいます。
日本でも火縄銃は戦術を大きく変えた武器です。
私の奥の手になるのは間違いないです。
孫策との戦までに、秘密裏に鉄砲隊を組織するつもりです。
そのため製造方法は秘匿にする必要があります。
こんなとき、李典が居てくれたらとつくづく思います。
旅に出たら必ず彼女を仲間に引き込むつもりです。
金ない、人材いないの私を悩ませているのが、砲身の部分です。
他の部品はまずまずの出来でした。
洛陽でもかなり腕の良い職人に頼んでいるのですが、上手くいきません。
この時代の技術では、鉄パイプの空洞のような均一な穴を開けるのは至難の技のようです。
お陰で、麗羽に金を無心するのが日課になりつつあります。
端から見たら、私は多分、ダメ男ですね。
今日も、日課となっている砲身を依頼している鍛冶屋に向かっています。
「親方いるかい。劉ヨウだけど空洞の空いた鉄の棒は出来ているかな」
私は後々のことを考え、砲身のことをこう呼んでいます。
「これは劉ヨウ様じゃないですか!良いところに気やしたね。依頼の品は出来ていますよ」
親方は自信ありげに私に言ってきました。
「本当かい。見せて貰ってもいいかな?」
私はまた失敗じゃないかと、思いながら親方から砲身を受け取り、品定めをしました。
・・・・・・。
「親方、上手くできているじゃないか!」
「へへ、劉ヨウ様には随分と贔屓にして貰ってます。ここらで決めねえと職人の沽券に関わりますよ。鋳造方法を少し変えてみたのが良かった見たいです」
「この出来なら問題無さそうだよ。早速帰って使わせて貰うよ!」
「しかし、劉ヨウ様はそんなものを何に使われるんです?随分、金を使わせちまって何ですけど」
親方は私が砲身を何に使うのかが気になるようです。
「これかい、これを使って絡繰りを作ろうと思ってね」
鉄砲も絡繰りの一種だと思います。
「へぇーーー。劉ヨウ様は絡繰りに興味がおありだったんですか。全然知りませんでしたよ。それで何を作られるんです」
「えーと・・・。絡繰り人形でも作ろうかなと思っているんだ」
ついとっさに嘘を言いました。
「絡繰りを作る方は変わった方が多いと聞いてましたが、劉ヨウ様も変わってらっしゃいますね」
「それは酷いな親方。まずは、こいつを試してから問題なけば依頼しようと思っているのだけど、これと同じものをもう一つ作れるかな?」
麗羽にも一丁作って上げようと思い、親方に尋ねました。
麗羽には私がダメ男ではないことを知っていて貰いたいですし、鉄砲は将来、彼女の助けになると思います。
「ええ、そりゃ問題ないですぜ」
私はそれから屋敷に帰り、麗羽の指導の合間を利用して、2週間掛けて、鉄砲を完成させました。
もちろん火縄も、鉄砲に必要な弾丸、火皿や火薬袋といった小物も準備済みです。
私は鉄砲を木綿袋に収納すると、それを肩に掛けて試し撃ちに人気の無い森に行くことにしました。
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