夢幻水滸伝
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第二百十四話 カーペンタリア湾海戦その十
「もう機雷原を突破して」
「下がる位や」
「動く程度は出来ます」
もう戦闘は可能ではないがというのだ。
「そして機雷原も」
「突破出来る位はあるな」
「余力は、ですが」
それでもというのだ。
「それ以上のことは」
「もうあかん」
「そうですね」
「しかしこれ以上の戦闘は無理です」
テレサが出て来た。大戦艦でのマーガレットとの戦闘を終えて率いていた兵達を戦死者まで含めて連れて戻って来たのだ。
「ここに留まっていても」
「そうしてもな」
「どうにもなりません」
そうだというのだ。
「ですから決断されるなら」
「そやな、戦闘が無理なら」
それならとだ、リーは述べた。
「もうな」
「撤退ですね」
「今は一歩も動けん状況や、しかし寝てな」
そうしてというのだ。
「そのうえでな」
「朝早くに撤退しましょう」
カイも言ってきた。
「日の出と共に艦隊を動かして」
「そうしてやな」
「湾の出入り口に向かって」
「機雷原を抜けてな」
「下がりましょう」
「そうするか」
「はい、ここは」
東南アジアの艦隊の中でこうした話をしていた、だが。
それは彼等だけでなくオセアニア軍も同じであった、彼等は湾の西側の潮流が弱い部分に集結して錨を下ろしていた。
シェリルはそこで仲間達を集めてそうして話していた。
「やられ過ぎたしもうこれ以上戦うこともな」
「出来んのう」
碧が応えた。
「これ以上は」
「そやな」
「敵も随分倒したけどな」
「こっちもやられた」
「同じ位の割合でじゃ」
それでというのだ。
「損害を出したけえ」
「そして全力で撃ち合ってな」
「もう将兵は疲労の極み、艦艇もな」
これもというのだ。
「損害が多過ぎて」
「あかんな」
「これ以上は戦えんけえ」
碧は鋭い目で答えた。
「とてもな」
「ほなどうする」
「あの」
ここでダーガーが言ってきた。
「宜しいでしょうか」
「どないした」
「はい、東南アジアの方と話をしませんか」
「戦やなくてか」
「そうしませんか、講和もです」
これもというのだ。
「しませんか」
「講和かいな」
「はい、どうでしょうか」
「この戦正直言って引き分けや」
シェリルは戦局を冷静に見て述べた。
「同じ割合の損害、しかもあちらは撤退も可能」
「尚且つこちらは追撃を出来ない」
「それやとな」
どうしてもというのだ。
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