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未来を見据える写輪の瞳

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四話

 カカシと再不斬は互いに首切り包丁とクナイを構えて睨みあう。今は互いの出方をうかがっているが、何かきっかけがあればたちまち激しい戦いが繰り広げられるだろう。そして、先に動いたのはカカシだった。
 ナルト達下忍では到底追い切れぬスピードで次々と印を組んでいく。そして、火遁を象徴する寅の印を組み終えると同時に、練っていたチャクラを解き放つ。

 ――――火遁、鳳仙火の術!

 カカシの息を吐き出す様な仕種と連動するかのようにいくつもの火の玉が再不斬へと襲いかかる。一つ一つの威力は低いものの、吐き出された火の玉の数は相当なもので俗に言う質より量の術と言ったところだろう。

 「はっ! あめえよカカシ!」

 だが、火の玉が再不斬に届くその時には再不斬も同様に印を組み終えていた。熟練の忍びはある程度まで印を組まれればその術が何かを予測することが出来る。再不斬も例にもれずその技能を可能としており、カカシの印に火遁の気配を感じ取った再不斬はカカシの術の完成を待たずして防御のための術を構築し始めていたのだ。

 ――――水遁、水陣壁!

 再不斬の包帯で隠された口から大量の水が吐き出され壁となって火の玉から再不斬を守る。性質の優劣から見ても不利であるカカシの火遁は再不斬の水遁の前にあっさりとかき消される。

 「甘いのはお前も同じだ」

 一閃。カカシが術を発動してから再不斬が防ぐまでの僅かな時間。その間にカカシは再不斬へと接敵し、クナイを振り抜いていた。しかし、さすがと言うべきか再不斬はその攻撃に反応。首切り包丁を手にとり迎えうつ。
 ガギィ、と鈍い音を立てて二つの刃がぶつかり合う。だが、やはり威力では大剣たる首切り包丁が遥かに上。カカシは力勝負は不利と早々に見切りをつけ大剣を受け流す。そして、

 「お、おおおぁおおぁおおおお!」

 攻撃、攻撃、攻撃。力で駄目ならスピードで、そう言わんばかりの連撃を再不斬へと見舞う。最初は余裕を持って防いでいた再不斬も、余りにも長く続く連撃に徐々に防御がついて行かなくなる。腕や足の所々に小さな切り傷ができていく。それでも、再不斬は耐えた、カカシの連撃が止む、一瞬の隙をつくために。そして、その時はやって来る。

 (今だ!)

 連撃の中に生まれた僅かな隙間。再不斬はカカシの攻撃に身を侵されながらも確かにその瞬間をとらえた。そして、再不斬はカカシを葬る……はずだった。

 「なん、だと!?」

 しかし現実は違った。カカシを両断するはずの首切り包丁は空を切り、代わりにカカシのクナイが再不斬の腹部に突き刺さっている。命に別状はないが、決して浅くは無い傷だ。

 「写輪眼の能力は、相手の術をコピーするだけじゃない」

 そう、写輪眼の能力はコピーだけにはとどまらない。動体視力の驚異的な向上、それに加え並はずれた洞察力により相手の筋肉の動きなどから未来予知レベルでの先読みが可能なのだ。
 カカシ連撃にあえて僅かな隙間を作りだし、再不斬の反撃を誘導。そして、その動きを写輪眼で完全に読み切りカウンターでクナイによる突きを放ったのだ。

 「さあ、再不斬。終わりにしよう」

 再不斬の腹部に突き刺さるクナイをわざと肉を抉るようにして引き抜き、再び構える。再不斬も首切り包丁を構えるものの、そこにあるのは怒気だけで覇気はない。傍から見ても、この勝負の結末は見えていた。

 「くったれがあ……ぁ?」

 迫りくるカカシ。その速度に対応できぬこと悟ったのか、再不斬は吠えた。最も、首に突き刺さった千本のせいで、何とも情けない尻すぼみになってしまったが。

 「これは……」

 「どうも、ごくろうさまです」

 警戒を解かぬまま再不斬へと歩み寄ろうとしたカカシの前に、仮面をつけた少年と思わしき人物が降り立つ。少年の風体を見て、カカシはおおよその事情を察した。

 「君は追い忍だな?」

 「ええ。僕はずっと彼を追っていました。しかし中々手ごわく、どうしたものかと困っていたところだったのですが……」

 「そこへ、俺達が来たわけね」

 「そうです。申し訳ありませんが、貴方がたを利用させていただきました」

 「いんや、構わないよ」

 忍びともなれば時には敵をも活用する。それはカカシとて承知のうえだ。別に、再不斬の首を狙っていたわけでもないため、カカシの態度は非常にあっけらかんとしたものだった。

 「……それでは、僕はもう行きます。何せ、色々秘密も多い体なもので」

 追い忍の少年は再不斬の体を担ぎあげその場から立ち去る。周囲に気配は無く、ようやく安心できる。そう思ったからだろうか。何時の間にかカカシの視界には青空が広がっていた。少し遠くからはナルト達が自分を心配する声が聞こえてくる。

 「またやっちゃったか」

 写輪眼の酷使による大量のスタミナとチャクラの消耗。こればっかりはどうしようもないことだ。とりあえず、カカシは部下に運んでもらわなければならないだろう自分に、若干のふがいなさを感じるのだった。





 「と、言うわけでお前達に修行を授ける」

 「いや、意味わかんねーってば」

 再不斬との戦いから一日。まだ誰も起き出さない様な朝方に、カカシは下忍三人を蹴り起こして森を訪れていた。何故、突如こんな事を始めたかと言うと暇潰し……などではなく。来るべき戦いに備えてのことだった。

 「いやー、それがな。この間の再不斬だけど、たぶん生きてる」

 「「「……なにぃー!!」」」

 三人の絶叫にまいったねこりゃ、と頭に手をやるカカシだがどういうことだとすぐさまナルト達に詰め寄られる。

 「一体全体どーいうことだってばよ!」

 「そうよそうよ! 首にでっかい針がブッスリ刺さってたのよ!」

 「ふざけた言ってるとただじゃおかねぇぞ!」

 「それがなぁ……」

 カカシは淡々と再不斬が生存していると予測した理由を説明していく。武器が千本だったこと、自分たちがいたとはいえ、追い忍がわざわざ死体を運んで行ったことなど。そして、恐らくあれは仮死状態にしただけだと。まだ忍の世界に身を投じて間もないナルト達にはいまいち実感がわかない内容だったが、少なくともカカシが冗談を言っているわけではないことだけは理解できた。

 「それじゃあ、本当に来るのね?」

 「まず間違いなくな」

 正直なところ、カカシも困っているのだ。また戦うとなれば、自分は再不斬とタイマンになるだろう。そうすると問題になるのがあのお面の子だ。カカシが予測するに、あのお面の実力は少なく見積もっても中忍。今のナルト達では例え三対一でも辛い相手だ。

 「お前達に課す修行は木登りだ。ただし、手を使わずに登ってもらう」

 だからこその修行。幸い、仮死状態から全快するには少なくとも一週間はかかる。その猶予を最大限に生かせば、何とかやりあえる程度にはなるだろう。

 「全員、片足を気につけてチャクラを足に練るんだ。そうすれば、ある特定の量まで練った所でチャクラに吸着力が生まれるまずだ。その量をしっかりと記憶しろ」

 「あ、本当だ。足が木にくっついてる」

 もっとも早くチャクラの吸着を感じたのはサクラ。思い切り足を引いても離れない足を不思議そうに見ている。

 「ちっ」

 サスケはどうだろうと眼をやれば、木の幹が爆ぜて体勢を崩し尻もちを付いているところだった。

 「サスケ、幹が爆ぜるってことはチャクラが多いんだ。もっと練る量を減らして見ろ。それとナルト、お前は練る量が少なすぎる」

 サスケのついでにムキーっと全然くっつかぬ足で地団駄踏んでいるナルトにも修正点を伝える。

 「ほらほら頑張れ。最終的にはこうなってもらうからなー」

 最後に手本を見せておくかと、カカシも下忍達と同じく印を組んでチャクラを練る。そして松葉杖をついたその足で木を垂直に登っていく。そして最後には枝に宙釣りの状態で立っていた。

 「ハハハ、スゲーってば」

 「へー、そんなことまで出来るんだ」

 「……確かに、出来れば役に立つな」

 この修行によって得られる成果に三人とも納得がいったのか、先ほどよりもやる気を出してくれたようだ。うむうむ、とカカシは頷き三人を見守るのだった。





 「先生、相変わらず護衛はアンタだけか」

 「ええ。アイツ等は今日も修行です」

 下忍達に修行を課してから既に二日。一番チャクラコントロールが上手いサクラは恐らく今日中にノルマである木のてっぺんまで登るだろう。サスケとナルトは努力次第といったところか。

 「しかし、本当に大丈夫か?」

 既に依頼主であるタヅナには再不斬が恐らく生存しているであろうことは伝えている。心配するのも無理はないだろう。本当に大丈夫なのか。カカシとてその問いに対する絶対の答えなど持ち合わせていない。だからこそ、カカシはあえてその問いの意味を履き違えて答える。

 「ええ、大丈夫ですよ。こんな状態でもチンピラ程度は問題ないですから」

 「そ、そうか……そうじゃな」

 タヅナもカカシの意図を悟ったのだろう。あえて乗ってきてくれる。

 「さて、タイムリミットは後少しか……」

 決戦の時まで、残された時間は少ない。果たして、カカシ達は無事任務を終えることが出来るのか。それは、まだ誰にも分からない。 
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