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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第百六話 夏侯惇、妹を救うのことその

「僕も炎を使えるからね」
「だから出せるというのか」
「そう。これを受けたら誰でも消し炭になるから」
 今着地する夏侯淵を見上げていた。血を楽しむ笑みで。
「さあ、死んで下さい」
「くっ、まずい」
 夏侯淵も今はだ。死を覚悟した。着地の瞬間はどうしようもない。
 とりあえず両手を交差させそこに気を込めて防ごうとする。だがそれでも絶望的だった。
 しかしここで。その彼女を。
 何か跳んで来たものが抱き締めてだ。そうしてだった。
 炎の下から救い出した。それは。
「流琉か」
「大丈夫ですか、秋蘭様」
 典韋だった。彼女がその小さい身体で己より背の高い夏侯淵を抱き締めていた。
 そうしてだ。その彼女が言うのだった。
「本当に危ないところでしたね」
「そうだな。済まない」
「御礼はいいです」
 それはいいと応えてだ。典韋は。
 立ち上がりクリス達を見てだ。こう言うのだった。
「私も貴方達と戦う」
「あら。じゃあ三対一じゃなくて」
「三対二よ」
 強い目でだ。シェルミーに返す。
「秋蘭様はやらせないから」
「面白いことを言う娘ね」
 典韋の話を聞いてだ。シェルミーは。
 目は髪の毛に隠れて見えない。だが口元はにこやかにさせてだ。こう応えたのだった。
「なら貴女の相手はね」
「貴女ですね」
「そうよ。荒れ狂う稲光のシェルミー」
 己のその名も名乗ってみせた。
「私が相手をするわ」
「おいおい、俺の出番はまだかよ」
 社がシェルミーの名乗りを聞いて肩を竦めさせて話した。
「ったくよ。退屈な話だな」
「生憎だけれど今は社はね」
「出番はないと思うよ」
 シェルミーだけでなくクリスもだ。その社ににこやかに笑って話す。
「だからここではね」
「ラーメンでも食べて観ていてよ」
「ちっ、ラーメンって言ってもな」
 今度は苦笑いで応える社だった。
「ここには火も鍋もないしな」
「じゃあ他のものを食べておいて」
「干し肉でも包でもね」
「じゃあこれでも食うか」
 社は何処からかパンを出してきた。それをだ。
 食べながらだ。戦いを観ることにしたのだった。
 夏侯淵は再びクリスと対峙する。そうしてだ。
 あらためてだ。彼に言うのだった。
「今度は不覚を取るつもりはない」
「そうだろうね。お姉さん強いし」
 クリスもだ。余裕の表情だがそれでも言う。
「二度同じ手は通用しないね」
「その通りだ。そしてだ」
「僕を倒すんだね」
「そうさせてもらう」
 こう返してだ。夏侯淵はクリスとの間合いを一気に詰めた。
 そうしてだ。その顔に左足の回し蹴りを出した。
 それでだ。クリスを倒そうとする。だがその蹴りを。
 クリスは右手で受け止めてだ。言うのだった。
「見事な蹴りだね」
「防いだか」
「凄いよ。お姉さんやっぱり強いよ」
「御主もな。私の今の蹴りを防いだのはだ」
「はじめてかな」
「姉者だけだ」
 夏侯惇、彼女だけだというのだ。
「今の蹴りを防いだ者はいなかった」
「お姉さん以外にはだね」
「そうだ。見事だと褒めておこう」
 言いながらだ。夏侯淵は足を収めた。次は。
 右手から拳を次々に繰り出す。それも防ぐクリスだった。
 
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