八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三百二十五話 総帥さんのお言葉その五
「五十位で人として衰えてくるんだ」
「人としてですか」
「君も知っている人だと思うよ、図々しくて尊大で無神経で」
「あの人ですね」
親父も話したあの人だ、人のお家に今日行くと言って上がり込んで大飯を平気で喰らって暖かい布団で寝てお金を貰って帰る人だ、仕事はしないで偉そうなことばかり言って奥さんにも三行半を突き付けれられた。しかもそれまで養ってもらった恩なぞ感じず爪切りまで持って行ったと怒っていた位だ。
爪切りまでお世話になっていたことに恩義を感じず爪切りみたいなことにこだわる器の小ささ、それを人に言う無神経さ爪切りまで自分でどうにも出来ない甲斐性なしそしてそれでいて尊大でいられる性根。正直人間ここまで落ちたくはない。これじゃあ死んだ時は餓鬼になるのがヲチだとしか思えない。
「あの人はもう」
「五十代でだよ」
「元々酷かったんですよね」
「もうぼけてきてね」
今で五十代なんてまだまだなのにだ。
「さらにどうにもならなくなってだよ」
「誰からも見放されたんですね」
「何の努力もしない人だったから」
「本を読むのは好きだったんですよね」
「本を読むことは素晴らしいよ」
総帥さんも読書家なのでこう言い切った。
「しかしそれだけか」
「違いますね」
「それだけでは何にもならないよ」
「人を話して外に出て」
「働きもしてね」
そうしてというのだ。
「世の中、人、そして心をね」
「知ってこそですね」
「よくなるのであってね、何も出来ないまま尊大になって」
「人を見下して何も努力しないなら」
「もう五十代でだよ」
「さらに悪くなって」
「どうにもならなくなるんだ」
そうなるというのだ。
「これもぼけるということだよ」
「人間としてそうなるってことですね」
「そう、何の鍛錬つまり努力をしないと」
「人はすぐに衰えて」
「畑中さんみたいにはなれないよ」
あんな凄い人にはというのだ。
「とてもね」
「やっぱり人は努力ですね」
「僕もそう思うよ」
「八条家の家訓ですしね」
「そうだね、努力すべし」
まさにだ。
「家訓にもあるね」
「あります」
確かにだ。
「それは」
「どんな才能も磨かないと何にもならないで」
「落ちるのも早いんですね」
「そしてどうにもならなくなるんだ」
そうなるというのだ。
「それは誰でもだよ」
「努力しないとですね」
「何にもならないでね」
「若くしてですか」
「ぼけてしまうんだよ」
「逆にずっと努力していたら」
それならだ。
「畑中さんみたいにですね」
「なれるよ」
「そういうことですね。けれど九十代であれはないです」
十一キロの木刀を毎日千回も二千回も振ることはだ。
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