夢幻水滸伝
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第二百八話 ハノイの女傑その一
第二百八話 ハノイの女傑
グエン=チー=ズーはこの世界に来てすぐにこの世界の自分のことと世界のことを声から聞いた、そうしてだった。
とりあえず最初は金だと思ってだった。
今自分がいるハノイの街を歩き回って求人を探した、そして居酒屋で店員を募集していたので早速その門を叩いた。
「店員募集してるん」
「おい、あんた何者だ」
中年のエルフの店長の親父はズーを見てすぐに顔を顰めさせた。
「只者じゃないだろ」
「わかるんやな」
「その気でわからない筈がないだろ」
ズーの発するオーラを見ての言葉だった。
「レベル二百六十はあるだろ」
「そういうのわかるねんな」
「俺はこれでも元冒険者だからな」
「それでわかるんやな」
「少しな、それであんた何者だ」
「只者って言うなら信じてくれるか?」
「そう思うか?」
親父はズーに真顔で返した。
「これまでのやり取りで」
「只者じゃないだろって言うたしな」
「それで答え出てるだろ」
「確かにな」
「それで本当に何者だ」
ズーにあらためて問うた。
「一体」
「いや、実はな」
ズーはここで自分が星の者であることを話した、するとエルフの親父は彼女の話を最後まで聞いてから彼女に言った。
「それならです」
「口調変わったな」
「星の方ですから」
親父はそこはしっかりと述べた。
「そのことがわかったので」
「それでやね」
「はい、それでなのですが」
ズーにまだ開店していない店の中でさらに話した、丁度準備中だった。
「この店も他の店も今困ってます」
「ハノイの店がかいな」
「今この街はヤクザ者が多く」
「ああ、ショバ代出せってな」
「そう言ってきてしかもヤクザ者達はそれぞれの組に分かれていて」
「争ってるか」
「切った張った裏切り裏切られの」
そうしたというのだ。
「血みどろの抗争を続けています」
「星のモンとして何とかして欲しい」
「はい」
まさにという返事だった。
「そうして欲しいのです」
「そのことやな」
「星の方でしたら」
世界を救う者ならというのだ。
「ハノイも」
「そやな、とりあえずお金が必要と思ってな」
「何をするにもですね」
「まずお金と食べものや」
この二つだというのだ。
「それはこの世界でも同じやろ」
「人はその二つがないとどうにもなりません」
親父もこう答えた。
「それは事実です」
「この世界でもな」
「それでこの店に店員としてですか」
「雇ってもらってまずはな」
「お金をですね」
「賄いも貰って」
食べものもというのだ。
「そして出来たらお家もな」
「そう思われてですか」
「来たんやが」
「そうでしたか」
「しかし考えてみれば世界はあたくし様一人では救えん」
ズーは腕を組んで述べた。
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