八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

「そうなりました」
「そうですね」
「はい、私は最初この話を聞いて思いました」
「嘘だとですね」
「その軍隊にいたのですから」
「真実を見てきたので」
「嘘ということがです」
　まさにというのだ。
「一目瞭然でした」
「話が出た時に当時の人達生きてましたけれど」
　結構多くだ、まだ一九九〇年代で畑中さんより年配の戦争に参加した人もまだ生きておられたのだ。
「それでもですか」
「新聞やテレビが大声で言ったので」
「通ったんですね」
「そうでした、学者の人達もです」
「否定しなかったんですよね」
「肯定しました」
「あの、それがわからないんですが」
　僕は畑中さんに言った。
「学者さんですよね」
「歴史学それも近現代史の」
「何でその人達がわからなかったのか」
「真実をですね」
「当時まだ軍隊を知っている人がいて」
　それも多くだ。当時四十歳でも八十代で健在な人も結構おられたのだ。
「それでちょっと調べたらです」
「わかりますね」
「それでどうして」
　歴史学者の人達がだ。
「わからなかったのか」
「あったと多くの人が言いました」
「何を調べたのか」
「不勉強だったのです」
「学者さんがですか」
「はい、まともに調べないで」
「それで、ですか」
　僕も聞いていて呆れた。
「酷いですね」
「多くの学者さんがマスコミと同じ考えだったので」
「疑わなかったんですね」
「証言が出たと言っても」
「ちょっと調べるとですよね」
「おかしかったですが」　
　それでもというのだ。
「真実を知っている人が言っても」
「嘘を大声で言うと事実になるんですね」
「真実の声の何倍も大きな声でしかもいつも言えば」
　新聞やテレビで連日連夜主張すればというのだ。
「事実になりです」
「通るんですね」
「はい、ですからマスコミが意図的に嘘を流せば」
「その嘘がですね」
「事実になります」
「そうですか」
「はい」
　まさにというのだ。
「私はそのことを知りました」
「復員されて」
「そうなりました」
「そうですか」
「それで今もです」
　二十一世紀になってもというのだ。
「マスコミは変わらず」
「嘘を言い続けているんですね」
「はい」
　そうだというのだ。
「悪辣なことに」
「慰安婦はそうですよね」
「帰国事業はさらにですし」
「沢山の人を騙して地獄に送りましたよね」
「もうこれは戦後日本最悪の犯罪行為の一つです」
　そう言っていいというのだ。