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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第三百二十話 飲み終えてその五

「自分の先輩がどうもね」
「そうしたことしたってな」
「親父も知ってるんだ」
「その話当の娘さんから聞いたからな」
「天理高校でだよね」
「あの人の先輩がな」
「そんなことしたらしいね」
「恋愛絡みだったっていうな」
 親父はいつもの軽い飄々とした感じでなくて深刻な真剣さのある顔で言った。
「友達のな」
「何か同級生の男の人がお友達に告白して揉めて」
「その先輩は友達の側に立ってな」
「告白した人徹底的に攻撃してその人をかなり傷付けたそうだね、そういえば」 
 僕はこの話から自分の学校の話を思い出した。
「うちの高校にも似た様な話があるよ」
「そうなんだな」
「うん、それで傷付けられた人は人が変わったみたいに暗くなったって」
「失恋の傷ってのは辛いんだよ」
 親父はその目を暗くさせて言った。
「そこでさらに追い討ちかけられたらな」
「余計に傷付くよね」
「そこでましてやな」
「自分に絶対の正義があるって思って徹底的にやったら」
「下手したら最悪の事態になるんだよ」
「相手の人が自殺するとか」
「幸いその人は自殺しないで今はどっかの大学に通ってるにしてもな」
 それでもというのだ。
「やっぱりな」
「トラウマになるよね」
「絶対にな、そんなことしたら後で反省してもだよ」
 後悔してもというのだ。
「遅いんだよ」
「やってしまったら」
「取り返しがつくこととつかないことがあってな」
「この場合はつかないね」
「人を傷付けたらな」 
 その場合はというのだ。
「それで今そのことを娘さんの後輩君に言われてるらしいな」
「みたいだね、娘さんが言うには」
「面と向かって悪人呼ばわりされて責められてな」
「その後輩の人も結構酷いね」
「酷いけれど俺は後輩君が言う場面にいても止めないからな」
「責めさせるんだ」
「俺はそこまでお人よしじゃないっていうかな」
 親父は真剣な顔のまま言った。
「そうされてもな」
「仕方ないんだ」
「そんな話だからな」
 それ故にというのだ。
「俺もな」
「止めないでだね」
「自由に言わせるさ」
「そうするんだ」
「止める人がいなくてもな」
「何か娘さんは後輩の人に怒っているけれどね」 
 その人にとって先輩の人は随分大切な人らしくてだ、この人は先輩の人を尊敬していていつも感謝していると言っている。
「やっぱりね」
「それだけのことをしたな、その先輩さんは」
「そうだね」
 僕もそう思う。
「やっぱり」
「その時自分が絶対に正しいと思っていてもな」
「実は間違っていて」
「それで取り返しのつかないことをしてな」
「反省してもだね」
「遅い時があるんだよ」
 僕に険しい顔で話してくれた。
「だから自分が絶対に正しいと思ってる人もな」
「要注意だね」
「目がきらきらしていてもな」
 邪心がなくてもというのだ。 
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