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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第三百十九話 お茶漬けを食べてその八

「俺はそう思うぜ」
「僕もだよ」
「そうだな、けれどお前は恰好よさは」
「別に思ってないよ」  
 恰好よくなろうとはだ。
「そんなことは」
「俺は思ってるさ、粋ってのをな」
「親父は考えていてだね」
「ああ、少なくともその長男さんみたいなな」
「ことはしないんだね」
「それであの人今どうなったんだ」
 僕に抹茶アイスを食べながら聞いていた。
「皆から嫌われて」
「何処にも居場所なくなって行方不明だったね」
「ああ、元々仕事しない人でな」
「それで何も出来なくてね」
「その癖偉そうでな」
「不平不満と悪口ばかりで」
 お寺にお世話になったらそのお寺の檀家制度やら何やらの不平不満ばかり言う様になった、教理をちょっと齧っただけで小馬鹿にしてだ。
「それでね」
「そんな人にはなりたくなくてな、前田慶次さんみたいにだよ」
「あの傾奇者の」
「ああいう感じにな」
「なりたいんだね」
「ああ、ただ実際の前田慶次さんも色々不平不満はあったろうな」
 物語では飄々としているこの人もだ。
「やっぱりな」
「家継げなかったんだったね」
「前田家をな」 
 家を継いだのは前田利家さんだった、あの槍の又左だ。この人は四男だったけれど長男さんの身体が弱くて継いだ、慶次さんは養子だったので継げなかったらしい。
「そのこともあったしな、政治の才能がな」
「どう見てもなかったね」
「だから話で百万石で秀吉さん迎えるとか言ったがな」
「漫画であったね」
「とてもな」
「なかった話だね」
「政治が出来ないからな」
 武芸や学問はあってもだ。
「それで軍を率いることもな」
「そうした人じゃなくて」
「あくまで個人が強いだけだったんだよ」
「それじゃあね」
「武芸者、教養人で」
 それでというのだ。
「政治家や指揮官じゃなかったんだよ」
「それでだね」
「ああ、百万石なんてな」 
 とてもというのだ。
「そんな人じゃなかったんだよ」
「そうだったんだね」
「まあ一万石か」
「出せてだね」
「それ以上はな」
 とてもというのだ。
「無理だったろうな」
「前田利家さんが家を継いだのも当然かな」
「そうだろうな」
「あの人も最初は傾奇者だったけれど」
 そちらでも有名な人だった。
「一軍率いて政治も出来たし」
「信長さんもそれ見てだよ」
 そのうえでというのだ。
「利家さんに継がせたんだろうな」
「そうだったんだね」
「俺が思うにな、そして慶次さんもな」
「不平不満はだね」
「あっただろうがな」
 それでもというのだ。
「あんな風に言わなかったからな」
「あの長男さんみたいに」
「だから恰好いいんだよ」 
 こう僕に話してくれた。 
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