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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第三百十八話 恰好悪い馬鹿その十五

「今言ったけれど白人社会でな」
「そこに黄色人種として入って」
「もうな」
「かなり異様だったんだね」
「その異様な目で見られて」
 少なくとも漱石自身がそう感じてだ。
「鬱になったんだろうな」
「けれどそこで和食があったら」
「随分違っていたかもな」
「そうだったかも知れないんだね」
「森鴎外は違ったみたいだけれどな」
 この人はドイツに留学して医学をまなんだ。
「あの人は」
「ああ、脚気のだね」
 ついついこの病気のことを思い出した。
「その原因を認めなかった」
「医者としては藪どころか土手だな」
「土手?」
「最低の医者をこう言うんだよ」
 親父は他ならぬ医師として述べた。
「医学者とか軍官僚としては優秀でもな」
「実際のお医者さんとしてはなんだ」
「最低だったな」
「脚気のことで」
「ああ、だからな」
 それでというのだ。
「俺もあの人はそう思ってるんだよ」
「お医者さんとしては最低だって」
「医者の仕事は人を助けることだな」
「それが助けるどころか多くの犠牲者を出したから」
「もう最低だよ」
 医師としてはというのだ。
「本当にな、けれど留学先ではな」
「凄い優秀でだよね」
「有名になったからな」
「森鴎外は夏目漱石みたいにはならなかったんだね」
「ああ、ただな」
「脚気だよね」
「もうそれでドイツの最新医学を身に着けたって思い込んだんだ」
 この場合は森林太郎だ、作家の森鴎外ではない。
「それでああなったんだ」
「夏目漱石より悪いね」
「夏目漱石もヒス持ちで被害妄想だったけれどな」
「あまりいい人じゃなかったみたいだね」
「奥さんやお子さん殴りまくっていたからな」
 今だとDV夫、DV親父として批判されること間違いなしだ。
「癇癪持ちでおっちゃこちょいでな」
「坊ちゃんみたいな?」
「本人さんが言うには赤シャツだったみたいだな」 
 坊ちゃんに出ているその人だ。
「どうもな」
「あの人かな」
「本人さんが言うにはな、まあ兎に角な」
「夏目漱石も褒められた人じゃなかったんだね」
「けれど弟子の人達は育てていたしな」
「森鴎外よりはだね」
「遥かにましだったな」
「じゃあ留学して鬱になった方がよかったのかな」
「そこまではわからないけれどな、まあそれでも和食が食えたら」
 外国でもというのだ。
「いいのは事実だよ」
「お茶漬けにしても」
「居酒屋の他のメニューもな」
「そうなんだね」
「だから今からな」
「お茶漬け食べるんだね」
「食ったらデザートまで入るかわからないけれどな」
 僕に笑って言ってきた。
「絶対にな」
「お茶漬けは食べるんだね」
「ああ」
 それは絶対にというのだ。
「今からな」
「強い意志を感じるよ」
 今の親父からはだ。 
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