八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三百十八話 恰好悪い馬鹿その十四
「俺は」
「決意しているんだ」
「この店に入った時からな」
「それでデザートの前になんだ」
「注文するな」
「前は注文しなかったね」
前に僕と居酒屋で一緒に飲んだ時はだ。
「そうだったね」
「あの時は店に行く前、朝にな」
「食べてたんだ」
「だから注文しなかったんだよ」
「そうだったんだ」
「ああ」
親父はさらに言った。
「けれどな」
「今はだね」
「ああ、注文してな」
そしてというのだ。
「食うな、それも梅茶漬けだよ」
「お茶漬けの中でも」
「梅干しも日本以外じゃそうそう食えないからな」
「日本でメジャーでもだね」
「外国じゃ全くないって食いもの多くてな」
「お茶漬けもで」
「梅干しもだからな」
それでというのだ。
「俺は今回梅茶漬けだ」
「それを食べて」
「それからデザートだ」
「そうするんだね」
「そうするな、それでお前は何を頼むんだ?」
僕にも聞いてきた。
「お茶漬けは」
「僕は別にいいよ」
親父に笑って答えた。
「お茶漬けは」
「今はいつも食ってるからか」
「いや、八条壮にいたら」
「そんなに食ってないか」
「食堂だからね、ただ時々ね」
「やっぱり食ってるか」
「晩ご飯の最後とかに」
その時にだ。
「食べてるよ」
「やっぱり日本にいたら食えるな」
「そうだよね」
「だからいいか」
「今はね」
「お前も外国に住んだらわかるぜ」
「お茶漬けが恋しくなるんだね」
親父に笑って尋ねた。
「それで居酒屋のメニューも」
「和食はな」
「居酒屋のメニューもだよね」
「入るけれどな」
それでもというのだ。
「他の国だとな」
「そんな風にだね」
「メジャーじゃなくてな」
「日本に戻ったら食べたくなるんだね」
「無性にな、夏目漱石さんなんてな」
「あの人イギリスに留学してたね」
「もう死亡説出る位にな」
そこまでだったという。
「鬱になってたけれど若しかしてな」
「日本の料理食べていたら」
「かなり違っていたかもな」
「そうだったんだね」
「まああの人は白人社会の中にな」
その中でも黄金時代のイギリスの首都にだ。
「留学して」
「いきなり入って」
「色々あっただろうけれどな」
「それでロンドンで塞ぎ込んでいたんだね」
「パリにも行ったけれどな」
「差別とかあったのかな」
「まあ奇異な目で見られたことは多かっただろうな」
このことは事実だろうという返事だった。
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