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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第三百十八話 恰好悪い馬鹿その十二

「もう碌でもないことばかりでな」
「褒められるどころかね」
「否定されることだよ」
 そうされないといけないことだというのだ。
「それもな」
「全否定だよね」
「そうなるべきことでな」
「尊敬どころかね」
「徹底してな」
 それでというのだ。
「否定されて軽蔑されることだよ」
「そうだよね」
「ちょっとでも自分を振り返るとな」
 その人がだ。
「死んでも言えるか」
「だよね」
 お刺身を食べながら応えた。
「普通は」
「そんな人を知ってるから余計にな」
「言わないんだね」
「ああ、実際その人は誰にも尊敬されてなかった」
「軽蔑されていたね」
「嫌われてな」
 それも皆からだ。
「そんな人生だったよ」
「皆から軽蔑されて嫌われて」
「否定されてたさ」
「それも徹底的にだね」
「親戚が集まっても誰も見向きしなくて話し掛けもしない」
 そうしたというのだ。
「そんなのだったさ」
「そうなるよね」
「そんなこと言う人はな」
「そうだよね」
「ああ、碌でもないのにな」
「自分を偉いと思って」
 自分を振り返ることを全くせずにだ。
「それでだね」
「人に真顔で自分を尊敬しろなんて言うとかな」
「親父はしないんだね」
「ああ、だから俺は尊敬するな」
「そういうことだね」
「他の人を尊敬しろ、荷が重いしな」
 笑ってまたこう言った。
「本当にな」
「それも大きいかな」
「ああ、人の尊敬を裏切るなんてな」
「怖いかな」
「怖いのはわかるだろ」
「うん、人を失望させたりとかはね」
 そうしたことになることはだ。
「確かにね」
「そうだろ、尊敬が失望から軽蔑になると思うとな」
「怖いよね」
「俺は軽蔑されてもいいがな」
 それでもというのだ。
「人のそうした感情の変化ってのは見てるだけで嫌でな」
「怖いからだね」
「尊敬されたくないんだよ」
「そういう面もあるんだ」
「ああ、だから俺は尊敬するな」
 僕にはっきりと言った。
「いいな」
「そこまで言うならね」
 僕にしてもだ。
「そうさせてもらうよ」
「そういうことでな、あと酒まだ飲むか」
「このお刺身の分で終わりかな」
 お造りを見ながら答えた。
「もうね」
「じゃああと精々一杯だな」
「そんなところだね」
「二人共結構飲んだな」
「そうだね」
 大ジョッキで何杯もだ。 
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