八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三百十八話 恰好悪い馬鹿その十
「お前もそんな子供を育てない為にもな」
「人の気持ちはだね」
「わかる様になれよ、お前の為にもなるしな」
「そんな人になりたくないしね」
そのは長男さんだけでなく母親にもだ。
「誰だってそう思うよね」
「そうだろ、普通はな」
「まさに反面教師だね」
「反面教師は見てもなるな」
親父の言葉はぴしゃりとしたものだった。
「そうなりたいだろ」
「そうだね」
「しかもこの母親は自分を尊敬しろとかな」
「そんなこと言ったら絶対に尊敬されないね」
誰が尊敬なぞするものかだ。
「逆にね」
「軽蔑されるな」
「恥を知ってたら言わないよ」
もうそれこそだ。
「自分を尊敬しろとか」
「そして実際に見たらだよ」
「そんな様だったからね」
「余計に軽蔑されてたんだよ」
「そうなるよね」
「そして息子さんもな」
「自分がこの世で一番偉いだね」
何が偉いのかその人の話を聞いていてさっぱりわからない、何もしてこなかったし出来ないし持っていない人の何が偉いのか。
「そう思ってたんだね」
「ああ、そうなりたくないだろ」
「本当にね、というかね」
「どうした?」
「いや、悪い意味でも親子って似ること多いね」
「トンビがってことはあってもな」
「蛙の子は蛙だね」
普通の場合を考えて僕は餓鬼とは言わなかった。
「そういうことだね」
「ああ、子供は親をずっと見てるだろ」
「その背中をだね」
さっき思ったことだ。
「見てるね」
「だったらな」
「子供も似るんだ」
「ましてべたべたと甘やかされていたらな」
「いつも親が傍にいるから」
「余計に影響受けてな」
そうしてというのだ。
「それでだよ」
「悪い意味でそっくりになるんだ」
「いい親に甘やかされたらまだいいさ」
「いい人になるんだ」
「いい部分を見てな、けれどな」
「悪い親だとだね」
「その母親みたいにな」
本当にどうしようもない人に甘やかされるとだ。
「どうしようもない人になるんだよ」
「馬鹿が馬鹿を産むかな」
「どうにもならない種類とレベルのな」
「そういうことだね」
「だからお前は俺を反面教師にしてな」
親父はここで笑って僕に言った。
「立派な人間になれよ」
「そこでそう言うんだ」
「ああ、俺みたいにはなるな」
やはり笑って言ってきた。
「何があってもな」
「今話している人達はそうするけれど」
もう躊躇なくだ。
「親父はね」
「しないか?」
「そんなこと考えてないよ」
「そりゃまたどうしてだ」
「親父が今話している人達みたいじゃないからだよ」
「だからか」
「どうしようもなくないから」
このことは確かだ。
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