八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三百十八話 恰好悪い馬鹿その九
「何があってもな」
「アホや馬鹿でも色々あるんだね」
「アホは合う方だって言われたことがあるんだ」
親父は僕に話してくれた。
「人にな」
「そういう意味だったんだ」
「天理教の人に教えてもらったんだよ」
「八条の教会の会長さん?」
「いや、あそこの大奥さんだよ」
前の会長さんの奥さんとのことだ。
「あの人にな」
「そう教えてもらったんだ」
「ああ、それでアホも色々でな」
「なったらいけないアホもあるんだね」
「馬鹿もな」
「人の痛みや苦しみがわからない、あともうどうしようもない」
「そういうのはな」
人はアホでも馬鹿でもよくてもというのだ。
「駄目ってことだ」
「馬鹿もアホも色々ってことだね」
「ああ、そこも覚えておいておいてくれよ」
「そうしておくね」
「人の気持ちはな」
「わからないと駄目だね」
「ああ、さっき話した長男さんもな」
この人もというのだ。
「やっぱりな」
「人の気持ちがわからなかったんだ」
「ああ、本当に無神経でな」
「そうだね、人の気持ちがわかっていたら」
それならだ。
「人に爪切りまでとかね」
「言わないだろ」
「そんな話人が聞いたらどう思うか」
「そうだろ」
「僕普通にあの人どうにもならないと思ったよ」
柚酒を飲みながら答えた。
「とんでもなく狭量で恩知らずで甲斐性なしで無神経な」
「そうだろ」
「普通に思ったよ」
「人の気持ちがわかっていたらな」
「言わないよね」
「それは母親譲りだったんだよ」
「甘やかしたその人だね」
何でも長男というだけでそうしたらしい。
「その人もおかしな人で」
「やっぱり無神経で人の気持ちなんてな」
「わからなかったんだ」
「さっき話したな、この人も」
「うん、遊んでばかりで無神経で欲が深くて我ばかりで」
何か話していた親の背中という言葉が思い浮かんだ。
「図々しくて家事もしなくてだね」
「自分以外の生きものは全部大嫌いでな」
「何でしてやってるだね」
「それで不平不満ばかりだったんだよ」
「長男さんはその血を受け継いだんだ」
「ああ、それでだよ」
「母子でとんでもない人だったんだね」
ここでまた親の背中という言葉が浮かんだ。
「そうなんだね」
「どうにもならないな」
「トンビが鷹を産むとは言うけれどね」
「その子供次第だよ」
「甘やかされてそれに甘んじていたら」
「蛙の子は蛙どころかな」
親父はお刺身、鯛のそれを食べながら話した。
「餓鬼の子だよ」
「餓鬼なんだ」
「ああ、だからな」
それでというのだ。
「その人はな」
「駄目な母親に育てられてなんだ」
「駄目な人になったんだ」
「そういうことなんだ」
「だからな」
それでというのだ。
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