八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三百十七話 日本にいることその三
「知らない方がいいっていうのはな」
「人間にこそだね」
「当てはまるだろ」
「そうだね」
僕も頷いた。
「妖怪よりも怖いね」
「人間の方がだろ」
「うん、そういえば幽霊もね」
妖怪と一緒みたいに言われるけれどだ。
「妖怪の方が怖いけれど」
「幽霊は人間だろ」
「魂だからね」
魂が身体から出た、それが幽霊だ。
「もうそのままね」
「人間だからな」
「その幽霊が怖いってことは」
「つまり人間が怖いことだよ」
「そうだね」
「これは死霊だけじゃないんだよ」
親父は梅酒を飲みつつ僕に話した。
「生霊もだよ」
「吉備津の釜でもあるね」
「あれはそのまま生きている人の怨念だろ」
「それが出てるね」
「そして死んでもな」
「怨念が残っていてね」
「ああなったからな」
浮気な夫に祟り殺そうとする怨霊になった、実際に殺してしまうのだからこの物語は恐ろしい。その結末が凄惨なこともあって。
「人間がどれだけ怖いかだよ」
「幽霊が怖いこともだね」
「ああ、それは人間がな」
まさにというのだ。
「怖いってことなんだよ」
「そういうことだね」
「だからな」
親父は僕にししゃもを食べつつ話した、ししゃもだけでなくホッケもあって焼き魚の方も充実している。
「妖怪よりもな」
「幽霊の方がずっと怖くて」
「そして人間ってのはな」
「怖いんだね」
「この世で一番怖いだろうな」
「その闇を見たら」
「ああ、それこそ知らなかった方がいい様な」
そうしたというのだ。
「話もあるんだよ」
「プライベートには」
「そういうものだよ、地獄極楽はこの世にあるっていうだろ」
「天理教の言葉だね」
「それは本当なんだよ」
親父の目は達観したものになっていた。
「六道はあってもな」
「この人間の世界にはだね」
「地獄も極楽もな」
仏教で言う地獄道も極楽道もというのだ。
「あるんだよ」
「そして地獄はだね」
「その闇なんだよ」
人間のそれだというのだ。
「そして何よりもな」
「怖いものだね」
「ああ、知ったら後悔する話だって多いさ」
「そうだね」
僕もそのことは実感した。
「何かと」
「だから出来るだけ人や家庭のことにはな」
「首を突っ込まないことだね」
「必要でない限りな」
「さもないと後悔するね」
「迂闊にとんでもないもの見てな」
そうしてしまってというのだ。
「後悔するからな、ただ絶対にな」
「見ないといけない時もあるね」
「その時は覚悟してな」
そうしてというのだ。
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