八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第三百十六話 親父との忘年会その十
「飲んでるんだ」
「それで終わりじゃないだろ」
「次は何を飲もうかな」
「お前が好きなのを飲め、ただな」
「ただ?」
「お前がビール飲むのは久し振りだな」
僕に笑って言ってきた、冷奴を食べながら。
「それを見るのは」
「そうだったかな」
「お前特にビール好きじゃないだろ」
「飲むことは飲むけれど」
言われてみるとだ。
「他にも色々飲むしね」
「だからだな」
「ビールばかりとはね」
そうだとはだ。
「限らないから」
「それでだな」
「実はビールを飲む機会は」
本当にだ。
「あまりないよ」
「そうだな」
「うん、ただ今はね」
「あえてだな」
「飲んでるよ」
そうしているというのだ。
「こうしてね」
「そうなんだな」
「気分でね」
「それで飲んでるな」
「うん、そして二杯目はね」
このビールの次はだ。
「別のお酒を飲むよ」
「そうするんだな」
「柚酒にしようかな」
僕はビールを飲みながら親父に答えた。
「そうしようかな」
「そこはお前の好きにしろ、兎に角今ははな」
「飲んで食べてだね」
「楽しむぞ、それでな」
親父は焼酎を飲み終えてだった。
今度はお造りを食べた、それで心から嬉しそうに言った。
「日本に帰って来たって思うな」
「お刺身も食べたら」
「ああ、やっぱり日本っていったらな」
「お刺身だね」
「イタリアでも今は刺身があってな」
「カルパッチョもあるよね」
「けれどな」
あちらでも生ものは食べられるけれどというのだ。
「やっぱり日本の刺身がな」
「いいんだね」
「それでこれを食ったらな」
食べながらさらに言った。
「帰って来たって本格的に思えるぜ。それでこんな美味いもの一人占めになんてな」
「しないよね、親父は」
「お前も食え、あと酒はな」
こちらはというと。
「もうな」
「それはだね」
「今度は梅酒頼むな」
こう言って早速だった。
親父はベルを鳴らしてお店の人を呼んで梅酒を頼んだ、僕もここでビールを飲み終えて柚酒を頼んだ、その後で。
親父はあらためて僕にお刺身を食べる様に促したので僕も食べた、僕が食べると親父はまた言ってきた。
「どうだ、美味いだろ」
「うん、このお店のお刺身もね」
「やっぱり刺身は最高だぜ」
「そしてその最高の味はだね」
「一人占めなんてな」
そんなことはというのだ。
ページ上へ戻る