八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三百十四話 八条荘の忘年会その四
「仏教の経典や哲学書、諸子百家の本も」
「色々ですね、本当に」
「その中には変な本もありますね」
「そうですよね、戦後の日本の思想家なんて」
あの吉本隆明なぞが戦後最大の思想家だった、子供でもオウムのことはわかるのにそれがわからなかった思想家とやらが戦後日本最大の知性と言われていたこと自体が戦後日本のどうにもならない知性の低さの象徴だ。
「もう読むだけです」
「無駄というのですね」
「そう思いますし」
「もうそう思うならです」
「宮沢賢治を読む方がいいですね」
「そうですよね」
もうそれこそだ。
「読むだけ無駄な本ありますから」
「思想書といいましても」
「はい」
その吉本隆明の本だ、こんな輩の本なんて本当に読むだけ無駄だと確信している。
「読むだけ無駄ならです」
「小説を読む方がいいですね」
「今で言うとライトノベルも」
「面白くてためになりますね」
「そして漫画も」
こちらもというのだ。
「勿論こうしたジャンルの創作でも駄目な作品はありますが」
「そうした作品は読まずに」
「いい作品をです」
「読めば多くのいいものが得られますね」
「そうです、思想書が何でもいい訳ではありません」
「よし悪しがありますね」
「私も思想書はあまり読みませんし」
早百合さんもというのだ。
「実は」
「そうなんですか」
「ワーグナーを研究していてショーペンハウアーにあたりますが」
「確か」
僕はショーペンハウアーと聞いて早百合さんに答えた。
「ドイツの哲学者で」
「厭世哲学ですね」
「そうでしたね」
森鴎外の妄想という作品で名前を見て知っている。
「その人ですね」
「どうもあまりです」
「お好きでないですか」
「私としては」
「そうなんですね」
「ですから人にも思想書自体を進めないです」
ショーペンハウアーだけでなくというのだ。
「そうしています」
「そうですか」
「むしろ小説やライトノベルに」
「漫画ですね」
「そうしたものの方が」
早百合さんとしてはというのだ。
「好きでお勧めします」
「そういうことですか」
「そうです、そして宮沢賢治は」
「小説の中でもですね」
「特にお勧め出来ます」
「そうした作品が多いですか」
「むしろそうした作品しかです」
宮沢賢治の作品はというのだ。
「ないとさえ言えます」
「名作しかないんですね」
「その人は。銀河鉄道の夜も」
僕が今読んでいるこの作品もというのだ。
「お勧めです、是非読まれて下さい」
「そうさせてもらいます」
「では。私はこれでお部屋に戻って」
そしてというのだ。
「着替えてきます」
「着替えられるんですか」
「はい、今夜は忘年会ですから」
だからだとだ、早百合さんは僕に笑って答えた。
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