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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第三百十四話 八条荘の忘年会その三

 そこに早百合さんが来て僕を見て言ってきた。
「義和さんも今はですか」
「はい、読書をして」
 そしてとだ、僕は早百合さんに答えた。
「時間を潰そうとです」
「そうですね、宮沢賢治ですか」
「銀河鉄道の夜です」
 早百合さんにこう答えた。
「それを読んでいます」
「いい作品ですよね」
 早百合さんは僕と席を外して左の席に座って言ってきた。
「宮沢賢治の作品は」
「どの作品もいいですよね」
「読んでいるとファンタジーですね」
「そうですね」
 言われてみればだ。
「銀河鉄道の夜もそうですし」
「風の又三郎もですね」
「不思議な作品ですよね」
「そうですね」
「童話であって」
 そしてだ。
「ファンタジーでもあるんですね」
「そうなりますね」
「今の視点で考えろとそうですね」
 二十一世紀のそれでだとだ。
「異世界ではないですが」
「宇宙を列車で旅したり」
「人間でない不思議な男の子が出て来たり」
「ファンタジーですね」
「そうですね、ただこの人の作品は」
 その本を見ながら思ったことだ。
「最後主人公が死ぬことが多いですね」
「グスコープドリの伝記等がそうですね」
「そう思うと読みやすくて優しい世界ですが」
 それでもだ。
「何処か悲しさや暗さがありますね」
「そうですね、これが」
「そうなんですよね」
「宮沢賢治は妹さんを早くに亡くして」 
 それが詩にもなっている。
「そして自分も結核で」
「長生き出来なかったですね」
「当時結核は死に至る病でした」
 そして国民病の一つだった、脚気や梅毒と並ぶ。
「それに罹っていてです」
「自分でも長生き出来ないとわかっていて」
「実際にでした」
「三十七歳でしたね」
「若くしてです」
 人間五十年というけれど五十年よりも遥かに短くだ。
「亡くなってしまったので」
「それで、ですね」
「作品にも出ているかも知れないです」
「そうですね」
「その暗さに。作品にはその人が出ます」
 創るその人のだ。
「どうしても。それで」
「宮沢賢治の作品にもですね」
「その優しく誠実な人柄が出て」
 そしてというのだ。
「そのうえで」
「妹さんのこともあって」
「ああした作品になっています」
「そうなんですね」
「ですから読むことは」
「とてもいいことですね」
「非常に大きなものが得られます」
 宮沢賢治の本を読むと、というのだ。
「私はそう思います」
「そうですよね、僕は思想書は読まないですが」
 これといってだ。
「それでもですね」
「そうした小説を読みますと」
「思想書よりもですね」
「思想書と言っても色々で」
 それこそピンからキリまである、優れた思想書も多い。 
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