恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第百二話 荀彧、帝を甘やかすのことその六
「それもかなり」
「べ、別にそんなことないわよ」
そう言われるとだ。荀彧はすぐに慌てふためく顔を見せてきた。
「帝に御会いできるってそれだけでも名誉なことじゃない」
「けれどあんたの家は元々名門だし」
荀もだ。司馬氏程ではないが代々清流の名門なのだ。
「帝に御会いできるだけの官職にもあるし」
「それでもよ。帝よ」
何故か必死にだ。荀彧は馬岱に言う。
「帝に御会いできるって素晴らしいことじゃない」
「名誉だっていうのね」
「そうよ。ましてよ」
ここからが本音だった。
「あんなによ」
「可愛いから?」
「物凄くね。だからよ」
それでだというのだ。
「まだ御幼少なのに。将来は絶対に」
「この国でも指折りの美人さんになられるよね」
「そうよ。だからよ」
それでだというのだ。
「今から。お世話をさせてもらって」
「あんた好みの美人さんになってもらうのね」
「そういう訳じゃないけれど」
言葉ではこう言っても顔は違っていた。
「けれど。私は帝の教育係でもあるし」
「それも自分で志願してよね」
「一目見てよ」
ついつい本音を言っていく荀彧だった。
「この方はきっと、って思って」
「何か荀彧がわかってきたわ」
「わかってきたって何がよ」
「いいから。帝がお待ちだよ」
馬岱は突っかかる荀彧を軽くあしらって返した。
「早く行こうよ」
「そ、そうね」
言われてだ。荀彧もふと気付いた。
「それじゃあね」
「行きましょう」
こうした話をしてだった。何はともあれ荀彧は宮廷に入り帝の前に出た。そのうえでだ。一礼してすぐにだった。
帝に対してあるものを出してきた。それは。
「それは」
「はい、本日お教えさせて頂く書と」
まずはそれを見せたのだった。
「今日のお茶とお菓子です」
「はじめて見るお菓子ですね」
「西洋のお茶とお菓子でして」
「西洋の?」
「はい、羅馬のお菓子です」
そこからのものだというのだ。
「西域から来た料理人とあちらの世界の者達に作らせました」
「何と、あちらの世界の者達まで入れてですか」
「そうです。いけなかったでしょうか」
「いえ、有り難うございます」
喜びを隠せない顔でだ。帝は荀彧に返した。
「朕の為にそこまで」
「帝の為ならです」
その為にはと。荀彧も言う。
「この程度のことは」
「ですが貴女はいつも」
こうしてだ。珍妙な菓子を持って参上してきているのだ。
それでだ。帝も感謝の気持ちを禁じ得ないのだ。それで言うのだった。
「いつも本当に」
「当然のことですから。それでは」
「はい、それではですね」
「学問をはじめましょう」
にこりと笑ってだ。帝に言ってだった。
そのうえでだ。彼女は帝に学問を教えるのだった。
その間だ。始終だった。
帝に手取り足取りだった。文字通り。
そうしてからだ。荀彧は学問が終わってからだった。
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