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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第百二話 荀彧、帝を甘やかすのことその七

 帝にだ。こんなことも言うのだった。
「それではです」
「最後はですね」
「疲れた御身体を癒す為に」
「御風呂に入りですね」
「そうして全てを癒しましょう」
「身体を清める為にもですね」
「はい。それで僭越ながら」
 にこにことして、かついそいそとしてだった。
 荀彧は帝を宮廷の風呂場に誘う。当然彼女も一緒だ。
 それで二人で一糸まとわぬ姿になりだ。その背を流しながら言うのだった。
「あの、何処かかゆい場所はありませんか?」
「あっ、特に」
「ないのですね」
「ありません。では今度は私が」
「いえ、そんな恐れ多いことは」
 帝が自分の身体を洗おうとするとだった。流石にだ。
 荀彧もそれはいいと言う。しかし帝の身体はだ。
 隅から隅まで洗ってだ。そのうえで奇麗にしたのだった。
 それでなのだった。荀彧は帝の前から退いたのだった。
 それが終わってから曹操に全てを報告する。しかしだった。
 全て聞いた曹操は。少し呆れながら彼女に言った。
「幾ら何でもね」
「いけませんか?」
「やり過ぎでしょ」
 こう荀彧に言ったのである。
「そこまでやると」
「そうでしょうか」
「というかね。桂花の帝への態度は」
「確かに。あまりにもです」
「べたべたとし過ぎています」
 曹操の傍らにいる曹仁と曹洪も言う。
「確かに帝は我が国の主ですが」
「そこまでいくと」
「お菓子まではいいわ」
 そこまではいいというのだ。曹操もだ。
「けれど。お風呂はね」
「お風呂は?」
「それは」
「そうよ。お風呂はやり過ぎよ」
 こう荀彧に言うのである。
「一緒に入るのは」
「ですが学問で疲れたお身体も御心も癒し」
「そしてその御身体を清めるのに」
「お風呂は最適ですから」
 だからいいとだ。荀彧も言う。
「ですから最後に」
「まあね。桂花は元々帝に忠義が深いし」
 彼女の家のそれもあるのだ。
「だから予想はしていたけれど」
「帝はとても聡明な方です」
 荀彧は確かに帝を敬愛している。しかしだ。
 その目は曇ってはいなかった。それでこう言えたのだ。
「ですから。このまま学問を続けていかれれば」
「立派な帝になられるわね」
「はい、なります」
 まさにだ。そうなるというのだ。
「ですから。学問はこのまま」
「続けていけばいいわね」
「そう思いますが」
「私もそう思うわ」
 曹操自身もだ。そう見ていた。しかしだった。
 そのうえでだ。彼女は言うのだった。
「それでもなのよ」
「それでもなのですか?」
「今の桂花はべたべたし過ぎよ」
 帝をだ。そうし過ぎだというのだ。
「猫じゃないんだから」
「そういえばだ」
 ここでだ。彼女の隣にいた夏侯惇が言ってきた。
「御主の耳だが」
「この耳?」
「それは猫の耳だな」
「それは見ればわかるでしょ」
「猫が好きなのだな」
「ええ、好きよ」
 それはその通りだとだ。荀彧も答える。
 
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