恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百二話 荀彧、帝を甘やかすのことその五
「私はあくまで華琳様一筋だから」
「そっちの趣味はないってか」
「そういうことよ。だからあんたはね」
「俺は?」
「そのよ。あんたを想ってる人のことよ」
「お静か」
「その人にもそうしなさい」
酒を飲みつつまた一手打つ。
「いいわね」
「それか。ちょっとな」
「お静さんにはそうしないの?」
「俺は剣一筋だからな」
だからだ。それはだという覇王丸だった。
「お静のことはな」
「あのね、剣も女の人もなのよ」
荀彧の言葉が厳しいものになった。
「どっちも手に入れてなのよ」
「随分と厳しいな」
「厳しいも何も当たり前じゃない」
また言う荀彧だった。
「どれか一つなんてケチなこと言わないの」
「どっちもか」
「そう、どっちも手に入れなさい」
荀彧の言葉は半ば命令になっていた。
「いいわね。そうしなさい」
「また凄いことになってるな」
「そうだよな」
周りの面々は荀彧が覇王丸にかなり強く言っているのを聞いてひそひそと話す。
「というか荀彧さんってな」
「何か覇王丸のことになるとな」
「随分真剣に言うよな」
「男嫌いだってのに」
「確かに男は嫌いよ」
それは否定しない荀彧だった。顔が必死なものになっている。
「けれどね。覇王丸の話を聞いていると」
「聞いてると?」
「それでか?」
「そうよ。お静さんのことが気になるし」
まずは彼女のことだった。そしてだ。
「覇王丸にしても。そこまで剣に一途って凄いじゃない」
「それが俺の生きる道だからな」
「だから。そう言えるのが凄いのよ」
それこそがだというのだ。
「あんた、このままいきなさいよ」
「このままか」
「そうよ。それで剣もお静さんもね」
「手に入れろっていうのか」
「そうしなさい」
こう言ってだった。また覇王丸に一手打つのだった。しかしだ。
勝負は決着がつかないまま、覇王丸も攻めたままだ。
時間になりだ。荀彧は完全に落ちた部屋の水時計を見て立ち上がった。
「それじゃあね」
「今から行くのか」
「ええ、行くわ」
まさにそうだというのだ。
「そうさせてもらうわ」
「じゃあ勝負はまただな」
「ええ、またね」
「今回も中々楽しかったな」
「っていうかこの将棋って」
「中将棋だったな」
「普通のより大きいせいかやりがいがあるわね」
その大きな盤と多くの駒を見ながらだ。荀彧は言う。
「駒の動きもそれぞれ独特だし」
「普通の将棋よりもな」
「面白く感じるわね」
「そうだよな」
そうした話をしてだった。覇王丸も今は将棋を止めるのだった。
そのうえでだ。荀彧は宮廷に向かった。その門でだ。
今日もだ。馬岱が待っていてそのうえで言ってきた。
「ああ、今からなのね」
「そうよ。帝にね」
「御会いしに行くのね」
「そうなの。それであんたは」
「今日もここで番をしてるんだよ」
笑顔でだ。馬岱は荀彧に答えた。
「司馬尉がまた来るかわからないしね」
「あいつね。言われてみればね」
「何時何してくるかわからないから」
「ええ。わかってるわ」
荀彧もだ。司馬尉は全く信じていなかった。
「じゃあ御願いね」
「任せて。それにしても荀彧ってさ」
「私が?どうしたの?」
「帝のこと大好きだよね」
少し探る様な笑みでだ。荀彧に言ってきたのだった。
ページ上へ戻る