八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三百十三話 休める時はその十三
「何でもありません」
「小さな権力ですね」
「森鴎外がその最たるものでしょうか」
「医師としてのあの人ですね」
「本名の森林太郎になりますが」
この時のこの人は軍医のトップであった。
「陸軍軍医総監にまでなりました」
「まさに陸軍の医学のトップですね」
「そして日本の医学でもです」
「頂点に立ちましたね」
「そうなりましたが」
それでもというのだ。
「今お話した通りにです」
「権威主義のはじまりだったんですね」
「日本の医学界の」
「今で言う東大医学部を出て」
それも抜群の成績でだ。
「ドイツにも留学して」
「そして言うなら箔が付いて」
「もうどんどん出世して」
その途中閑職に就いたことはあったみたいだけれどだ。
「そうしてでしたから」
「高踏派といいますし」
「非常に気位の高い人で」
「それでドイツ医学も学んで」
「権威になりました」
「そうだったんですね」
「その為にです」
まさにというのだ。
「非常に権威主義で」
「日本の医学界の権威主義のはじまりみたいになったんですね」
「そうです、ですが」
「はい、あの人は医師としては」
「取返しのつかないことをしています」
「脚気ですね」
医師としての森鴎外、森林太郎としての致命的な失態だ。このことを挙げずして医師としてのこの人のことは語れない位だ。
「あれは酷いですね」
「それも権威主義故です」
「ドイツで細菌医学を学んできて」
「そうして陸軍の医学の頂点にいたので」
「ああなりましたね」
「はい、ですがその権威は」
「日本だけでしたね」
所詮はだ。
「そうでしたね」
「ですから権威にこだわってもです」
「小さなものですね」
「はい」
まことにというのだ。
「所詮と言えるまでに」
「そんなものですね」
「権力も言うならば」
「その場のものでしかないですね」
「そうです、ですが止様は」
「そういうのにこだわらないですからね」
それも全くだ。
「だから余計に多くの人を助けられるんですね」
「あの方は天衣無縫でもあられます」
「ですね、破天荒で」
そしてだ。
「そうした一面もありますね」
「だからこそ救える命もあります、ただ」
畑中さんは僕にこうも話してくれた。
「救えない命もあります」
「親父ではですね」
「逆に医学の権威、権力の座にあればこそです」
「救える命もありますね」
「左様です、そのことはです」
「それぞれですね」
「その時で違います」
どうしてもというのだ。
「そこがまた難しいです、ですが」
「親父がこだわらないことは」
「いいことかと、そしてその止様とです」
「忘年会を楽しめばいいですね」
「二十八日は、そしてその前の二十六日も」
この日はこの日でというのだ。
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