八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三百十三話 休める時はその十一
「我ばかりで」
「皆から忌み嫌われて」
「亡くなってもです」
「憎まれ嫌われているんですね」
「お孫さんはあまりにも嫌っているので」
その為にというのだ。
「餓鬼に生まれ変わっているからと言って」
「そうしてですか」
「布施餓鬼は一切しないとです」
「言っていますか」
「はい」
そこまで言っているというのだ。
「そして餓鬼が苦しむことばかりされています」
「敢えて苦しむ様にですか」
「何でもその人が家族と衝突して家出する時にお家のお金を家族が苦しむ様に全部持って行ったことがありまして」
「それは相当性格が悪いと出来ないですね」
これは流石にないと思った。
「普通にそこで家族どころか親戚全員から縁切りですね」
「幸か不幸かそうならず」
「その後で、ですか」
「お孫さんがこのことを知られて」
「布施餓鬼をしないどころかですか」
布施餓鬼も徳の一つだ、幾ら生前浅ましい行いをした人でも慈悲を示すべきというのだ。それでお坊さんも餓鬼の為にお供えをしたりするのだ。
「むしろ」
「餓鬼が苦しむことばかりです」
「して苦しめていますか」
「あんな奴にはそれが相応しいと言って」
「餓鬼を苦しめていますか」
「ご自身のお祖母さんを」
「因業ですね」
「その方は他の徳は積まれていますが」
それでもというのだ。
「布施餓鬼だけはです」
「されないんですね」
「絶対に」
「お祖母さんへの憎しみがそれだけ強いんですね」
「左様です、ご自身の肉親を恨むことはよくないです」
「そうですよね」
人を恨むこと自体がだけれど親戚なら尚更だ。
「それは」
「ですが理由あってなら」
「それならですか」
「残念なものがあります」
「肉親が恨まれるべき人というのなら」
「そうした人も見てきましたので」
だからだというのだ。
「私はこう言えます」
「そうですか」
「世の中いい意味でも悪い意味でも色々な人がいると言えます」
「それは事実ですね」
「はい、そしてその悪い人はです」
「死んでもそう思われますね」
僕は残念な顔で述べた。
「そうなんですね」
「そしてお布施もです」
「されないですね」
「遺影に挨拶もされないです」
「朝の挨拶とか」
「そうなります、他の人に挨拶はされても」
「それも嫌ですね」
聞いていて正直思った。
「出来ることなら」
「亡くなった時残念だったと言われる人生であるべきで」
「そうなる様に人は徳を積んで」
「努力すべきです」
「やっぱりそうですね」
「死んでよかっただの死んでからも恨まれる様なら」
今話している人の様にだ。
「こんな残念なことはないです」
「そのこと心に刻んでおきます」
「そうされて下さい」
「親父もそんな人間じゃないですしね」
色々破天荒でもだ。
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