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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第百一話 帝、劉備を信じるのことその一

                          第百一話  帝、劉備を信じるのこと
 都での不穏な噂は。さらに広まっていた。
 劉備が皇位を狙っている、そのことがだ。今や都中で囁かれていたのだ。
「そうだな。漢中王ならな」
「あの方ならそれもできるだろう」
「何しろ今やこの国で第一の実力者だ」
「しかも多くの家臣や仲間もいる」
 権勢や人材を見てだ。誰もが言うのであった。
「大将軍であり相国でもあられる」
「そのお立場ならな」
「何でもできるだろう」
「皇位を狙うことも」
「しかも」
 ここでだ。もう一つ、噂の根拠になる条件が語られるのだった。
「皇族でもあられるしな」
「皇族ならば皇帝になってもおかしくはない」
「そうだ、皇帝になれる」
「例え傍流の傍流であっても」
 それでもだ。皇族ならばだというのだ。
「劉氏の方ならな」
「皇帝になることができるのだ」
「では今の帝を」
「まさか」
 噂が核心に入り不穏さを増していく。
「廃するのか」
「いや、表立ってしなくてもいいぞ」
「というとまさか」
「そうだ。それは」
 暗くなる。その話が。
「暗殺という手もある」
「暗殺!?帝をか」
「そうされるというのか、漢中王は」
「まさか。そこまで御考えなのか」
「恐ろしいことだぞ」
 都の者達はこう話していく。
「今の帝を暗殺し自身が皇帝になるなぞ」
「大罪と言っても飽き足らない」
「しかしこれまで幾つもあったことだ」
「では漢中王もか」
「そうされるのか」
 こうしてだった。多くの者が劉備に対して疑惑の目を向けるようになっていた。そしてこのことはだ。
 宮廷にも届いていた。それでだ。
 呂蒙がだ。困惑した顔で太史慈に言うのだった。
「今はかなり危ういです」
「劉備殿のことね」
「はい、そうです」
 彼女のことに他ならないとだ。呂蒙は話す。
「このままではです」
「誰も劉備殿を信用しなくなるわね」
「そしてさらにです」
「さらになの」
「はい、帝が劉備殿を危うく思われ」
 帝の耳に入ればだ。そうなるというのだ。
「そしてそのうえで」
「劉備殿を」
「宮廷から排除されるか。最悪」
「死をだな」
「死罪を命じられるかも知れません」
 簒奪を考えているとなればだ。それは当然のことだった。
 それがわかっているからだ。呂蒙は今危惧を感じているのだ。
 それでだ。こうも言うのだった。
「ですから。この噂を何とかです」
「打ち消さないといけないわね」
「はい、そうです」
 その通りだとだ。太史慈に対して言う。
「さもなければ本当に危ういです」
「そうね。こうした根も葉もない噂はね」
「消さなくてはなりませんから」
「けれど。噂は」
「消そうとしても消せるものではありません」
 呂蒙はまた話す。
「根拠のないものであってもです」
「正直。劉備殿は」
 どうなのか。太史慈にもわかっていた。
「算奪やそうしたことは」
「絶対に考えたりはしません」
「ええ、間違いなくね」
「しかしです」
 だが、だ。それでもだというのだ。
「市井ではそれは別です」
「そうしたことができる立場にいるからね」
「それだけで。噂は根拠ができます」
 そしてだ。話され広まるというのだ。
 
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