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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第百一話 帝、劉備を信じるのことその二

「噂はどんな護りも抜けてしまうものですし」
「止めようがないわね」
「考えたものです」
 呂蒙はその片眼鏡の奥のその目も曇らせた。
 そのうえでだ。こうも言うのだった。
「噂で攻めてくるとは」
「仕掛けてきたのは誰かしら」
「司馬尉殿でしょう」
 呂蒙の目が変わった。鋭くなった。
「おそらくは」
「そうね。こうした噂を流すのはね」
「そしてその噂により劉備殿が失脚して得をするのは」
「劉備殿が失脚すれば共にいる雪蓮様達も失脚します」
 要するにだ。劉備達は一蓮托生なのだ。それは董卓の乱を抑えた時にもう定まっていることだ。
 そしてだ。その彼女達が失脚すればだ。得をするといえば。
「あの方しかいませんから」
「状況証拠は揃い過ぎてるわね」
「あまりにも」
 また言う呂蒙だった。
「ですから。司馬尉殿でしょう」
「何かやることが陰湿ね」
 太史慈から見ればだ。そう見えるのだった。
「人を噂で陥れようとするなんて」
「確かに。しかし有効なやり方です」
「そうね。実際に今こんなことになってるし」
「司馬尉殿はかなり残忍な方ですし」 
 このこともだ。彼女達は最早よく認識していた。
「こうした陰湿なやり方もです」
「平気で使うのね」
「そうです。おそらく目的の為には手段を選ばない方です」
「増々嫌な奴ね」
「しかし。私達は今その司馬尉殿を向こうに回しています」
「厄介なことにね。とにかく今はね」
 太史慈はたまりかねた調子で話した。
「この状況を何とかしないとね」
「いけません」
 そうした話をしてだ。呂蒙も太史慈もだ。これからのことに憂慮を覚えていた。
 そしてだ。その劉備の方でもだった。
 孔明がだ。難しい顔をしてだ。いつも手にしている羽毛の扇を擦っていた。
 そうしながらだ。彼女は鳳統に話した。
「正直今の状況だけれど」
「物凄くまずいわね」
「ええ。街や宮廷だけじゃなくて」
 話はだ。他にも広まっているというのだ。
「兵隊さん達の間でも後宮でも」
「特に後宮でも広まっているのがまずいわね」
「帝が休まれる場所だから」
 そのだ。帝の耳に入ることが危険だとだ。二人は認識していた。
 それでだ。孔明は憂いに満ちた顔で鳳統に話した。
「宦官や女官達も噂をしているから」
「それが帝のお耳に入れば」
「ええ。それに」
「何時かはね」
「帝のお耳にも入るわ」
 それでだ。どうなるかだった。
「帝が桃香様に疑念を抱かれれば」
「大変なことになるわ。間違いなく」
「よくて失脚」
 そしてだ。悪ければ。
「死を賜ることも」
「有り得るわね」
「流石に皇族だから惨たらしい処刑はされないけれど」
 これも皇族の特権だ。皇族が罪で死なねばならない時は処刑はされないのだ。毒やそういったものを贈られ自害を勧められるのだ。
 だが死ぬことには代わりない。それでなのだった。
 孔明も鳳統もだ。言うのだった。
「ここでどうにかしないと」
「今のうちに」
「けれど」
 それでもだと。孔明の口調がここで変わった。
 それでだ。こう鳳統に言った。
「今回は」
「ううん、私も」
 鳳統もだった。孔明と同じく弱った顔を見せる。
 
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