八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三百九話 冬の花火その五
「そこからもっと減ってるらしいから」
「それで九百万って」
「ひょっとしたら人口の半分かな」
「そんなに酷いのね」
「将軍様は丸々としているけれどね」
もっと言えばあの人だけはだ。
「そうなっているけれどね」
「他の人達はそこまで餓えているのね」
「そんな状況だから産業もインフラも成り立っていなくて」
「夜に灯りもないの」
「そうなんだ」
「凄いことね」
「それで日本もね」
僕達の国もだ。
「夜に灯りで覆われているよ」
「そうなっているのね」
「今はね、けれど昔は」
終戦直後はだ。
「もう灯火管制をしていなかったけれど」
「夜は真っ暗ね」
「そうだったよ」
「そこも違うのね」
「神戸も灯りが消えることはないし」
夜の間ずっとだ。
「他の街もね」
「東京なんか凄そうね」
「あまり行くべき場所じゃないかも知れないけれど歌舞伎町なんかはね」
新宿のあそこはだ。
「とりわけね」
「灯りが消えないのね」
「完全に夜の街だから」
「灯りが消えないのね」
「うん、そうなったからね」
「今の日本は」
「それにテレビもあって」
あの頃の日本にはだ。
「パソコンもスマートフォンもね」
「なかったわね」
「今はスマートフォンで太宰の小説が読めるよ」
「手軽に」
「そう、手軽にね」
本当にそんな感じでだ。
「読める様になったから」
「それが今なのね」
「昔と何もかも違うから」
もうそれこそだ。
「だからね」
「昔とクリスマスは違っていて」
「それで今の基準から昔のクリスマスを考えることも」
このこともだ。
「かなり難しいよ」
「昔と今は違うわね」
「その時代のことはその時代の人にしかわからないし考えもね」
これもだ。
「当時の考えがあるし倫理観とかもね」
「当時のものがあるのね」
「太宰にしてもね」
「そうなのね」
「もう七十年以上昔だしね」
当時を生きていた人も今では僅かだ、畑中さんも奥さんもそうだけど総帥さんもその頃のことは懐かしい目でお話してくれる。
「その時のことは」
「それでなのね」
「クリスマスも」
今日のこの日のこともだ。
「変わったよ」
「当時と今では」
「だから太宰も冬の花火なんてって感じだったし」
そしてだ。
「何もない中でね」
「メリー=クリスマスね」
「そんな風だったんだ、太宰は長生き出来なかったと思うけれど」
結核の症状がかなり進んでいたらしい、自殺したけれどどちらにしても長くはなかったみたいだ。ペニシリンが日本で普及するのは少し後だ。
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