八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三百九話 冬の花火その四
「あの作品はね、けれどね」
「SFはね」
「その分野とは全く無縁だったから」
それでだ。
「未来のことはね」
「書かなかったのね」
「あまり未来を考える人でもなかったみたいだし」
人間失格等を読むと過去を見る人だったと思う。
「イルミネーションとかね」
「冬の花火も」
「考えなかったと思うよ」
「そうだったのね」
「それどころか戦後のどうしようもない状況を考えたら」
もう何もない、バラック等しかない状況の中ではだ。
「ワインとかローストチキンとかケーキもね」
「どれも当時の日本にはなかったわね」
「食べることだけで必死だったからね」
「あるとしたらアメリカ軍ね」
「あそこにしかないもので」
あるにしてもだ。
「今みたいなクリスマスなんて」
「想像も出来なかったのね」
「日本がここまで発展するどころか」
太宰だけでなく当時の時代に生きていた人達は皆だったと思う。
「戦前のレベルに戻ることもね」
「考えられなかったのね」
「あれだけの勢いで復興して」
そしてだ。
「それからの高度成長なんてね」
「考えられなかったのね」
「そうだと思うよ」
「夢だったのね」
「夢どころか想像すらね」
昭和二十一年とか二十二年とかだとだ、太宰が自殺した二十四年でもだっただろう。
「思わなかったと思うよ」
「そうだったのね」
「冬の花火だってね」
そして何もない中でのメリー=クリスマスもだ。
「想像もね」
「しなかったことで」
「こんなクリスマスなんて」
それこそだ。
「太宰も誰もね」
「あの頃は思いもしなかったのね」
「冬の花火なんて」
「花火は夏のもので」
「スキー自体した人殆どいなかっただろうし」
あの頃の日本ではだ。
「スキー場で花火を打ち上げるとかね」
「なかったことね」
「あの頃の日本と今の日本は全く違うから」
「もう何もかもがよね」
「世界もね」
日本だけでなくだ。
「こんなに夜が明るくもなかったよ」
「イルミネーションだけじゃないわね」
「街の灯り自体がね」
「昔と全く違うわね」
「衛星で夜観たら凄いから」
もう驚く位だ。
「北朝鮮以外の土地の殆どが光っていてね」
「あの国だけは違うのね」
「国民の人達の四割は餓えてるからね」
「四割ね」
「二千三百万位だったかな」
北朝鮮の人口はだ。
「そのうちの九百万位がそうらしいから」
「物凄い数ね」
「その二千三百万がもっと減ってるらしいから」
「飢え死に?」
「あと疫病もあるらしいから」
「何か凄いことになってるみたいね」
「もう三十年位慢性的な飢餓状態らしいから」
言われている話だとだ。
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