八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三百九話 冬の花火その三
「色々言われてるけれど」
「批判も受けてるわね」
「けれど偽善は嫌いで」
このことは確かでだ。
「卑怯でもなかったんだ」
「そうだったのね」
「戦争終わってもね」
その価値感が一変する中でだ。
「親が負けるとわかっている戦争に向かうのに子供がついていかないか」
「そう言ったの」
「親が日本で子供が日本人だよ」
「そう言って戦争支持していたことを否定しなかったの」
「それが悪いのかって言ったんだ」
それも確かにだ。
「それで天皇万歳ともね」
「言ったのね」
「そうだったんだ」
「あの時期で言ったのね」
「当時マルクス主義が出て来ていて」
スターリン賛美まであった。
「革命になったら首に縄がかかるぞって相手を脅す人もいるよ」
「粛清ってこと」
「羽仁五郎が言ったけれどね」
そのマルクス主義の学者の一人だ。
「そんなこと言う手合いもいた中でね」
「太宰はそう言ったのね」
「太宰自身大地主の家だしね」
そのマルクス主義者が嫌うだ。
「若い頃そっちの運動に入りかけたけれど」
「結局入らなかったのね」
「すぐに手を引いたからね」
このことは太宰にとって幸いだったと思う。
「それで戦後はね」
「そう言ったのね」
「それで自分の考えを言って」
「戦争も肯定していたのね」
「皇室もね」
このことから左翼の人で太宰を嫌う人もいる。
「そうだったんだ」
「太宰は卑怯ではなかったのね」
「今みたいに北朝鮮の太鼓持ちしていて急に韓国の方にいてしきりに日本を糾弾する人とは違うよ」
これがノーベル文学賞作家だから恐ろしい。
「太宰は確かに色々あったけれど」
「卑怯ではなかったのね」
「そう言っていいと思うよ、それでね」
僕は花火、打ち上げられているそれを見ながら話した。
「その太宰が言った冬の花火は」
「太宰は何でもないと言ってたけれど」
「奇麗だよね」
「ええ、凄くね」
「当時は冬に花火なんてなかったから」
もう夏限定だった。
「だから太宰もね」
「そう書いたのね」
「そうなんだ、けれどね」
「こうして見ると」
「その実はね」
これがだ。
「この通りね」
「奇麗よね」
「凄くね、イルミネーションと雪があって」
そうしてだ。
「それに花火もだからね」
「想像もしなかったわよね」
「太宰でもね」
作家としては凄かった、日本文学に不滅の名を遺すまでに。
「あの人はSF作家じゃなかったし」
「太宰にSFね」
「想像出来ないよね」
僕は香織さんに笑って言った。
「流石に」
「それはね」
香織さんも笑って応えてくれた。
「かなりね」
「ファンタジーは書いてるけれどね」
「そうなの」
「御伽噺がね」
「ああ、あれがなの」
「ファンタジーだと思うよ」
童話と言っていいだろうけれど文章がそのまま太宰が語っている感じなのでまた違うと思う。この辺り芥川の蜘蛛の糸等の童話と違う。
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